【寄稿】在日ブラジル人も横の連絡組織を 日本とブラジルの気質比較 森本昌義
日本人が集団的に行動するのはどこから?
質問:日本人は何故、多様性には不寛容で、何かにつけ集団的に行動したり、他の人たちと同じように振る舞おうとするのですか? なぜ、他人と違うことが恥ずかしいのでしょうか? 回答:日本や外国の社会学者の多数を占める見解で、私も賛成するのですが、水田によるコメの栽培に起因するのです。19世紀末まで何世紀にもわたってコメは単に食料品ではなく、日本の政治・経済・社会の基盤でした。陸稲ではなく水田での稲栽培のためにはまず河川や溜池など水源を確保し、水路の構築や整備をしなければなりませんがこれらの仕事は個人ではできません。 現在は機械化され個人の作業になりましたが、それはごく最近のことです。何世紀もの間、ムラに住む全員の共同作業が必要でした。さらに田んぼにいつ水を入れるか、いつ田植えを始めるか、いつ稲刈りするか、も決めなければなりませんが全員が同意する必要がありました。 つまり、関係者全員が同じように考え、同じペースで労働することが要請されたわけです。多様性を許容することはあり得なかったわけです。もし一人だけ自分勝手なことをしたら、他の人たちとの関係は断たれてしまいました(ムラ八分です)。 このような集団主義は、安定的な経営環境とあまり変化のない技術レべルでの継続的な大量工業生産(家電や自動車など)にはとても適合していましたので、20世紀の終わりには日本のPIB(国内総生産)は世界2位まで拡大しました。ところが21世紀に入り、デジタル化が進み、限りなくイノベーションが要請されています。〝皆と同じ〟ではなく、多様な人材、多様な考え方や価値観が必要なのですが、残念ながら日本はそこまで行っていません。
在日ブラジル人へのアドバイスは
質問:日本に住んでいる若年の日系ブラジルに対し、なにかアドバイスいただけますか? 回答:まずは日本語をマスターしてほしい。 また、高等学校を卒業することは必須です。その後、大学や専門学校に進学することをお勧めしますが、ブラジルのSENAIのような、各県などが用意している技術センターや職業訓練校をトライすることも良いでしょう。学費が安いし、仕事を見つけるのに都合よいです。 すでにリクペロ大使、関口氏もおっしゃっていますが、ブラジルと日本の両方の文化を身につけていることを誇りに思っていただきたい。ブラジルの文化には先に述べた日系ブラジル人のアイデンティティである8個の価値観を含みますが、さらに、日本社会には無いがブラジル社会全体の特徴である〝多様性〟も併せ持っていることを自覚し、それを日本社会で発揮していただき周りの日本人に刺激を与えていただきたい、と思います。ありがとうございました。 ☆ このあと出席者全員が8組に分かれ、日本に住む日系ブラジルの若者の特徴やどのようなことで日本社会に貢献できるかなど、3回に分けてワークショップが行われました。その間、上武大学で国際ビジネスを講じていらっしゃる村元エリカマリア博士と教育関係のコンサルタントであるミゲル上運天さんが、教育者の立場から日系ブラジルの若者たちについて論じました。 ほぼ丸一日を使ったプログラムでしたが、40名の日本に住む日系ブラジルの若者たちに対して大きな刺激を与えたことと確信しています。この中から多数のリーダーが現れ、強力な組織活動が誕生することを期待しています。
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