【#佐藤優のシン世界地図探索84】イスラエルvsイランの『アウトレイジ』的な手打ち
佐藤 それはやっぱり、ある意味、ひとつの国家が大人になってきたということです。分かりやすいですよね。 ――いや、しかしその......。 佐藤 イランが大人の対応をしているから、イスラエルの行動の一定の範囲に収まっているわけです。 ――そりゃ、国家は大人になれるかもしれませんが、それをケツ持ちにしていた各武装組織、ハマス、ヒズボラ、フーシ派はどうなるんですか? 切り捨てられて暴れまくろうとするも、イランというケツ持ちからミサイル、ロケット弾、各種火器、そして資金。これが断たれれば何もできなくなる......。 佐藤 本当にひどい状態にされています。客観的に言って、こんなひどい話はないと思います。「ヤレ!!」と言われて突っ込んだのに、「何ですか、これは?」という話だと思いませんか? ――武装組織たちの声が聞こえて来ますよ。「オヤジ(イラン)、どうしてもっとミサイルを撃ち込んでくれねえんだよ。イスラエルの玉(首脳陣)を取りにいってねえじゃねえかよ。俺ら、ネタニヤフの家に無人機をぶち込んで、殺そうとしたんだぜ。どうしてくれんだ? 俺たち、今、ボロボロだぜ」なんて言ってるみたいです。 佐藤 映画『仁義なき戦い』の山守義雄(金子信雄)が、「ワシは知らんかに、なんとかせいや」と言いそうな雰囲気ですよね。 ――その山守義雄の名セリフに「そがな昔のこと、誰が知るかい」と言うのがあります。すると、大手の組が弱小組を脅して、言う事を聞かないと潰しに入っている、ヤクザ映画にありそうな話が現実の戦争で起きているわけですね。 佐藤 そういうことです。 ――『アウトレイジ』で三浦友和が演じる加藤は、若頭から出世して関東ヤクザの大手の組『山王会』の会長になりますが、こんな名セリフがあります。「いいか、お前、誤解されるようなことをするなよ。兄弟ってものも大事だけど、親子はもっと大事だからよ」。ここで、ハマス、ヒズボラ、フーシ派は、兄弟分になりますが、イランとの関係は親子になります。 佐藤 そうですね。 ――すると、ハマスはもうダメかもしれない。ヒズボラは、どうやってイスラエルと手を打つつもりですか? 佐藤 「イスラエルに刃向かわなければ生き残らせてやる」ということになるでしょうね。ただ、そのためには「疑わしきは殺す」という話になってしまいます。 ――『アウトレイジ』シリーズの最後に、大友は「もういいよ」と言って拳銃で自分の頭を吹飛ばしますが、ビスボラの場合は自殺ではなく、自爆テロ攻撃が多発しそうです。 佐藤 その通りだと思います。 ――フーシ派はイスラエルから離れているから、「わかりました、お疲れ様でした。もう、ミサイル撃ちません」で終わりですよね。 佐藤 それで、サウジアラビアが許してくれるかどうかです。