データジャーナリズム――世界に広がる「データからニュースを発見する」挑戦
■日本の現状と課題 日本は残念ながら「データジャーナリズム後進国」であることは否めません。データジャーナリズムを実践するには、これまでに培ってきた伝統的な取材や編集のスキルとは別に、ITやデザイン、統計に関するスキルが必要となりますが、こうしたスキルを編集現場にうまく取り込めていないことが最大の理由として考えられます。海外の報道機関も以前は同じような状況でしたが、エンジニアの採用を進めたり、データジャーナリズムを専門的に実践する部署を設置するなど、対応を取ってきたことが今に繋がっています。 これまで、報道機関にとって重要とされる政府・自治体が提供するオープンデータは、「どこにどのようなデータがあるのかわかりにくい」「コンピュータで利用しにくい形式で公開されている」「あるはずのデータが公開されていない(公開のタイミングが遅い)」など、非常に質が低く、データジャーナリズムに取り組む意義はそれほどありませんでした。しかしながら、今月(2013年6月)イギリスで開催されたG8サミット(ロックアーン・サミット)で、各国が協調しながらオープンデータの取り組みを進めていくことを合意する「オープンデータ憲章」が採択されたこともあり、日本でも政府・自治体によるデータ公開の動きは加速していくことが予想されます。また、今月に入って政府・自治体が保有するデータを使いやすい形式で提供するインターネットサービス「次世代統計利用システム」の試験運用が開始されるなど、ここにきて少しずつ環境が整ってきました。 こうした動きに対応するためにも、日本でもデータジャーナリズムを実践できる人材の育成や、データジャーナリズムを実践する組織の整備が急務となっています。また、新興メディアやNPO・NGOといったデータジャーナリズムの新たな担い手が生まれてくることも期待されています。 (赤倉優蔵/LIVEonWIRE_JOURNAL) ---------- 赤倉優蔵 LIVEonWIRE_JOURNALディレクター、日本ジャーナリスト教育センター運営委員。2011年からデータジャーナリズムの実践、普及に努める。