知事東南アジア訪問 成果と課題(下) 福島県産果物輸出に手応え 生産者増やす対策重要
「ジューシーで甘くおいしい」。10日から14日にかけて東南アジアで行われた内堀雅雄知事によるトップセールスでは、タイ、ベトナムの両国とも福島県産のモモとナシが消費者から好評を得ていた。「試食したほとんどの人が果物を購入してくれた」。いずれも日本より2~3倍ほどの価格となるが大勢が次々と買い求める光景に、内堀雅雄知事は県産果物の輸出拡大に向けた伸びしろの大きさに自信をのぞかせた。 タイの輸入業者「バンコクフードシステム」は今回の内堀知事の訪問に際してバンコクに開店する予定の高級スーパー内に県産モモを取り扱う店舗を出店させる計画を示した。氏家勇祐社長が開設に踏み切る背景には、日本人の6倍もの果物の消費量を誇るタイ人の好みに高品質の県産モモがかみ合うとの判断があったという。ベトナムでも、都市部の1カ月当たり家計支出の約5割は食費との統計があり、両国ともに輸出先として高い将来性を秘めているとのデータがそろう。
ただ、ベトナムへの輸出増に向けては国同士の調整が課題として横たわる。日本からベトナムに輸出できる果物は現在、リンゴ、ナシ、温州みかんの3品目のみ。モモなどは二国間に検疫上のルールが存在せず、輸出不可能な状況だ。それでもイオンベトナムの幹部から「県産モモも販売したい」と強い要望を出され、内堀知事は実現に向け、政府に直接働きかける考えを示した。 今後は輸出需要に応えるための生産者を増やす取り組みも重要になる。農林水産省によると、県産ナシの昨年の生産量は約1万4千トンで前年より千トン減少した。農業分野農の担い手不足が深刻化する中、県やJAは世界を相手に県産農産物を発信する取り組みが若い世代の就農意識の向上にも大きな役割を果たすとみている。今回は初めて福島大の食農学類の学生や大学院生計4人が同行。福島市で家業の果樹農家を継ぐ予定の安斎智香さん(3年)は地元の果物が海外で受け入れられている様子を目の当たりにし、「福島の果物の良さを多くの人に広めたい」との思いを強くした。
内堀知事は、経済成長が著しく、若い世代が多い東南アジアを市場として重要視する姿勢を示した上で「今後、長く福島のファンでいてもらうためにも、農産物と観光の二つの切り口で関心を持ってもらう戦略が大事だ」と強調した。(本社報道部・高内広樹)