山崎貴×小島秀夫「国内でヒットすれば大丈夫、という時代ではない」 コロナが変えた「字幕」の可能性
山崎:でも、昔はありえなかった話が、だいぶ実現できるようになっている感じもあります。 小島:それは山崎さんの次の一手、二手にかかってくるんじゃないですか。 山崎:うわっ、責任重いじゃないですか。今、なかなかデンジャラスな道に進みつつある気がするんです。小島さんは独立して最初の作品として「DEATH STRANDING(デススト)」を作りましたが、よくぞあそこに突っ込んでいったと思っていて。お話を聞きたかったんです。 ■メンターはデル・トロ 小島:52歳だったかな。家族には、もう辞めろと言われていました。 山崎:それはゲームクリエイターを引退しろってことですか? 小島:そうです。でも独立して、コジプロを作った。5年くらいは助走期間として、これまでできなかったCMや短編映画制作を楽しむのもありかもしれないと思っていました。そのことをデル・トロに相談したら、「ファンが待ってるから、今まで通りの規模で、今までにないルックで、ストーリーもあるゲームをすぐに作らないといけない」と言われたんです。 山崎:メンターはデル・トロだったんですね。 小島:不安はちょっとありましたけど。 山崎:ちょっとだったんですか? 小島:インディーズとして独立したので、クレジットカードとかは作れなくなりました。でも今までやってきたゲーム作りをもう一回やるだけなんで、簡単ですよ。新作映画を作るようなもんです。 山崎:そこで過去に大ヒットしたメタルギア的なものを作っていたら正しい方向に行っている感じがしますけど。 小島:前に作ったものの亜流みたいなものを作る道もありますが、かっこ悪くないですか? 山崎:かっこ悪いんだけど、背に腹は代えられないじゃないですか。僕とかだと、怖いからやっぱり安定路線というか。 小島:そこは思い切っていきましょう! 山崎:小島さんって、不可能なハードルを二つ越えてるんですよ。想像しないところに突っ込んでいって、しかも成功を収めている。片方はできても、両方を成し遂げるなんて普通はできません。逆に言うと、世界中に「小島さんが作るんだったら、よくわからなくても絶対やる」って忠誠を誓っているファンがいっぱいいるわけですよ。 小島:その期待を裏切りたいですよね(笑)。北野武さんは、「古いファンは捨てるべきだ」と言っていました。僕は古いファンも新しいファンもほしいけど、そんなおいしい話はありません。