闇バイト強盗「仮装身分捜査」は“導入の必要性高い”が… 解決すべき「3つの法的問題」とは【弁護士解説】
捜査官・一般人の協力者の人権保護の問題
次に、「②実際に捜査を担当する警察官や一般人の協力者の人権侵害のリスク」の問題は、仮装身分捜査を担当することになる人の人権の保障をどう確保するかというものだという。 福原弁護士:「仮装身分捜査であることが犯人グループに発覚したら、捜査官など、捜査に関わる人が危険にさらされることになります。 そこで、『人格権』『自己決定権』(憲法13条参照)、『手続的権利』の保障(憲法31条参照)を確保する見地から、仮装身分捜査は、他に有効な方法がない場合に限って認めるべきでしょう。 また、本人に対し、リスクがあることと、考えられるリスクの内容について十分に説明したうえで、真摯(しんし)な了承を得るしくみが確立されることが大切です。 まず、捜査官の場合、職務行為とはいえ、リスクの内容について本人が納得し、任意の了承を得たことが要求されると考えます。形式だけでなく実質上も、上司や周囲からの無言も含めた『圧力』などがあってはならず、本人の真摯な承諾を厳格に要件とすべきでしょう。 そして、仮に一般人の協力を得る場合にも、本人の真摯な承諾がさらに厳格に要求されなければなりません。 一般人にとって警察官等の捜査官は『社会の治安を守ってくれる正義の味方』であるとともに、時には『権力を行使する怖い存在』でもあります。『捜査に協力してくれ』とか、『こういう危険なことをやってくれ』などと頼むこと自体、事実上、協力を強制することになってしまう可能性もあります。したがって、一般人については、捜査官の場合にも増して、真摯な意思による承諾を厳格に要求する必要があるでしょう」 捜査官・一般人の協力者が真摯な意思で仮装身分捜査に参加したとして、次に、身分を偽っていたことなどが犯罪組織に知られ、危険にさらされるリスクが考えられる。 もとより、捜査手法としてどこまで踏み込んでよいかを法律で定めるのは「手の内をさらす」面もあるので難しい。そこで、福原弁護士は、解決策として「少なくとも、捜査担当者が自分の判断で捜査を中止して良い条件についても、定めておくことが望ましい」と提案する。