不振に陥る中国EVメーカー、支援する地方自治体も泥舟に
中国は景気回復を目指す中で新たな試練に直面してしまう
一方、中国製のEV販売が好調だった欧州は、中国が欧州市場に低価格車をダンピング(不当廉売)し、そうすることで欧州メーカーのEV生産を阻害していると問題視し始めている。EUは中国製EVの輸入に最大45%の関税を課す構えを見せており、中国メーカーがすぐにでも欧州で堅調な販売を見込めるという期待は打ち砕かれている。 国内経済の他分野で過剰な生産能力を生み出した計画ミスですでに行き詰っている中国政府は、EV推進から手を引いている。政府のEV業界への支援は2018年から66%近く減っている。このような動きでは通常、業界の統合が余儀なくされる。他のメーカーより弱く、低効率で、出来の劣る製品を生産する企業はしばらくして廃業となり、廃業を免れた他の企業は少ない生産で収益を確保しなければならなくなる。だが、今起きているのはそうした動きではない。財政難に陥っているところが多い地方自治体が、急速に死に体になりつつあるEVメーカーを存続させるために公金を注いでいる。 上海や深圳、昌平など一部の地域では、国産EVの購入者に1台1000~1万元(約2万~21万円)のリベートを提供し始めている。EVメーカーをより直接的に支援しようとしている自治体もある。EV生産に関わる高収入の労働力を維持・拡大するためだという。一部の地方自治体には選択の余地がない。政府がEV産業を手厚く支援していた初期に、これらの地方自治体はEVメーカーに直接投資したり、EVメーカーに代わって融資を受けたり、債券を発行したりしてEV促進に関与していた。一例として、安徽省合肥市は、EV産業を支援しなければEVメーカーNIOへの50億元(約1050億円)の投資を失う立場にある。 こうした状況は明らかに無理がある。地方自治体はすでに財政難に直面している。不採算の企業を支援する余裕などなく、しかも世界的にEV販売が急回復する可能性は極めて低い。最終的にはメーカーの淘汰が進み、民間の投資家は地方自治体と同様に損失に直面し、地方自治体は維持しようと努めている高所得の労働力も失うことになる。そうなれば、中国は景気回復を目指す中で新たな試練に直面する。
Milton Ezrati