【2024衆院選 与党過半数割れ】民意にどう向き合うか(10月28日)
第50回衆院選は自民党と公明党の政権与党が過半数割れした。自民の裏金問題に対する不信は日増しに高まった感がある。自民は大幅に議席を減らし、立憲民主、国民民主などの野党が躍進した。政権運営は不透明な状況となったが、民意は緊張感のある国政を求めたと言える。 格差是正のための小選挙区定数「10増10減」の影響を受け、県内小選挙区は5から新たな区割りの4となった。1、2、3区は立憲民主党の前職が勝利し、4区は自民党の新人が議席を得た。比例を含めた本県議員は立憲民主が現状の4人以上を確定させた。自民は5人から2人に減った。県内でも与党に厳しい審判が下された。 自民党は12年前の第46回衆院選で圧勝し、政権を奪還して以来、連続して安定した支持を得てきた。経済政策や新型コロナウイルス対策で批判の強かった3年前の前回も、数の力で国会を運営できる絶対安定多数に達した。 こうした流れに水を差したのが、今回の大きな争点の一つとなった自民党の裏金問題だった。石破茂首相が選択した早期解散も党利のみを考慮した強引な政治手法との印象を残し、超短期決戦の選挙戦へと突入してしまった。
共同通信社が選挙戦中盤に実施した第2回衆院トレンド調査では、望ましい選挙結果として「与党と野党の勢力が伯仲する」との回答が49・7%に上った。圧倒的多数を占めた自民党による政権は、年を重ねるごとに「数による横暴」と映る場面が増えたと国民が捉えたのだろう。一方で、野党に政権交代の可能性を与えた。有権者が投票によって示す民意とは、実にうまくできている。絶妙なバランス感覚が議席に反映された。 選挙戦は、裏金を巡る「政治とカネ」一色となり、他の政策論争はかすんでしまった。多くの国民、県民は景気や雇用、物価高に対する早急な対策を求め、年金や社会保障、子育てや少子化といった将来世代にどう責任を持つのか、各党の主張をもっと聞きたかったはずだ。 政治への信頼を回復するには、こうした課題に誠実に向き合うしかない。特別国会、来年度の予算を議論する通常国会に臨む当選者には、生活者の目線に立った政治の実現を望みたい。(安斎康史)