茂木健一郎「人生の幸せ・満足とは…」“気候”と“幸福度”の関係を脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「天候によって気分が左右されるのは?」という質問に答えました。
<リスナーからの相談>
私は季節や気候によって気分が左右されやすいです。特に梅雨の時期などに強く影響を受けてしまいます。季節や気候と脳は 何か関係あるのでしょうか…?
<茂木の回答>
こういう悩みの方、案外多くいらっしゃるかもしれませんよね。 気候と気分の関係で大きな影響を受けるのは「太陽の光」です。 脳の中に受容体というものがありまして、太陽の光に触れると、目が覚めたり活動しようと思ったりするんです。曇や雨の日は、我々の脳のスイッチを入れてくれる太陽の光の刺激がなくなってしまうので、気分が落ち込む方もいらっしゃるかなと思います。 ただ、その際に脳の中の神経伝達物質・セロトニンが関与しているのですが、じゃあ曇りの日はセロトニンの分泌が減って気分落ち込むのかというと、そういうことでもないんです。 実は、これについては興味深い研究があるんです。「人生にどれぐらい満足しているか?」という幸せ度が、気候によって変わるのかを研究した事例があるんです。 例えば、アメリカのカリフォルニアのように太陽がさんさんと輝いているような所と、曇りがちな所や雪が降るような所と比較したところ、結論としては全く変わらなかったんです。 その時々の一時的な気分は、太陽が出ているかどうかということに影響を受けることもあるのですが、長期的に見ると、人間の人生の幸せとか気分というのは、気候にはあまり影響を受けないと。 なので、天候や気候で気分が左右されてしまうのはわかるのですが、人間の脳にはそれを乗り越える力もあるんです。 例えば、よく寝ること、美味しいものを食べること、そして、いろいろな人と話すこと。我々の生活を支えている気候以外の側面で、ぜひ脳を整えていただけると良いかなと思います。 結論としては、天候・気候と、人生の幸せ・満足とはあまり関係がないとこういう科学的な事実もあります。悪天候でどんよりした気持ちになってしまう日もあるかもしれませんが、少しでも明るく前向きな日々を送っていただけたら嬉しいなと思います。