『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督が予測する未来の映画とは。空間コンピューティングで超絶ホラー体験が可能に!
空間コンピューティングでどんな映画作品を作ってみたい?
上田 今後僕がバーチャルを活用して是非やってみたいと思っていたのが、「スリルハウス」という企画です。お客さん自身に、いろんな体験がどんどん迫ってくるというコンテンツなんですが、例えば上から天井が迫ってきたり、でっかい大蛇に襲われる、虫が身体中に這いつくばるというような……。映像を見るんじゃなくて、主人公として実際に体験できるものをつくる、というアイデアです。 その作品の実現のために重要なポイントのひとつが、空間コンピューティングの解像度なんですよね。体験して解像度の高さを実感したので、「スリルハウス」は本当に怖いコンテンツになると思います。はやくみんなにも体験してほしいなぁ。 渡邊 このリアル感で、虫が足から登ってきたら相当気持ち悪いですよね。考えただけでも恐ろしいです(笑)。 上田 さっきApple Vision Proで、恐竜の画像を見た時に、「恐竜がでてくる夢を見てるみたいだな」って思たんですね。劇場で映画を見ている人でも、「起きて見る夢」って表現する人がいるんですが、これは本当の意味での「起きて見る夢」が表現できるんじゃないかと思っています。 渡邊 なるほど、現実と夢とがミックスして、起きてるんだけど夢を見ている、みたいなことですか? 上田 そうです。だって本当に恐竜が目の前にいたんです(笑)。でもそれは現実じゃない。どう言えばいいのか難しいですが、本当に夢みたいなんですよね。「没入感がすごい」っていう表現の、更に上の感覚ですかね。新しいコンテンツの可能性をすごく感じました。
スマホがなくなる日、どんなことをしてみたい?
上田 スマホがなくなる日、僕は自分博物館を作って仲間を呼びたいです。 今のスマホってアルバムがあって、そこに写真だったり、ビデオだったりが入ってますよね。それらが未来になったら、もう立体のアルバムみたいな仕様になっているんだと思います。いまよりもっと、入り込めるような記録が撮れるようになっていると思うんです。立体的な写真や立体的な映像を空間に自由に並べて、自分博物館を誰でも作れるような未来になっているはずなんです。そして遠い距離に住んでいる人でも、「今日何時から自分博物館やっているから来てー!」と世界中から友達を呼んで、一緒にその博物館の中をコミュニケーションを取りながら歩き回ることができたら面白いなって思いました。 渡邊 2040年くらいになったら、現代の単なる写真ではなくて、写真をAIが立体にしてくれて、そのシーンに実際に入れたりもするかもしれませんね。写真や動画に入って、その思い出を語ったり、「このスイーツ美味しかったよね」「またここいきたいね」とか、そんな体験型の写真が、AIによって実現可能だと思いますね。 上田 今だとお祭りの写真を見ながら「5年前に行ったあのお祭り、めっちゃ楽しかったよね」と会話をしたりしますが、将来はその写真の中に入り込めるってことですね。そのときにあった屋台とか、花火とか、お祭りの雰囲気をいつでも再現できて味わえるようになったらすごいですね。焼きそばのにおいとかも再現できたら本当にすごい。何かタイムマシーンみたいな感じですよね。 渡邊 リアルとバーチャルを融合させて、タイムマシーンが作れちゃいますよっていうことなんだろうなと思うんですね。 上田 タイムマシーンより先に出来そうですよね。過去を記録さえしておけば、いつでも過去に戻れる。もう一回味わいたい経験っていうのは、誰にでもあるでしょうから、すごく夢がありますね。 渡邊 だから意外と今のスマホの中の写真データ、大事かもしれないですね(笑)。 上田慎一郎/Shinichiro Ueda 映画監督。1984年滋賀県生まれ。2010年に映画製作団体PANPOKOPINAを結成。2018年公開の監督作『カメラを止めるな!』が都内2館での上映から口コミで話題が広がり、全国で拡大上映される。 渡邊信彦/Nobuhiko Watanabe STYLY 取締役COO 。1968年千葉県生まれ。2016年 Psychic VR Lab(現STYLY)の設立に参画し取締役COO 就任。XR クリエイターの発掘や育成を目的としたプロジェクト「NEWVIEW(ニュービュー)」を立ち上げたほか、グローバルに活躍できる人材を輩出するために尽力している。
TEXT=ゲーテ編集部