『カメラを止めるな!』上田慎一郎監督が予測する未来の映画とは。空間コンピューティングで超絶ホラー体験が可能に!
渡邊 XRの可能性という意味では、Apple Vision Pro を実際に体験してみていかがでしたか? 上田 やっぱり解像度ですかね。想像していた解像度と全然違うので、本当に臨場感もリアリティもあって感動しました。今までのデバイスって、「解像度がもうちょっと高ければ……」と思うことが多かったんですが、ここまで美しい映像技術がついに来たかと思いましたね。 渡邊 Apple Vision Pro は、環境光を3Dオブジェクトがちゃんと反映するような設定で出来ているので、電気を消すと、画面で見えている景色も連動して暗くなったりするんですよね。リアルに、本当の景色がそこにいるように見えるというのが、ひとつ大きなポイントだと思っているんです。体験した人の感想で多いのが、「きれい」とか、「本当にそこに居るみたい」というシンプルなものが多いんですが、ここが相当すごいポイントなんだと思うんです。 上田 そこに本当に実在する感じっていうのが、とても重要なんだなって改めて思いました。現実に近づけようとしている途中の段階のものだと、少しガッカリ感が出てしまいます。体験型のエンタメを作ろうとしている身としては、そこが重要なポイントなんですよね。解像度、リアルさなど、ストーリーに関係ない部分が気になると、お客さんが作品自体に集中できなくなる。だからこそシンプルなんだけど、解像度の凄さに感動しました。
空間コンピューティングの世界で映画監督の仕事はどう変わるのか?
渡邊 AVPなどに代表される空間コンピューティングを使って、どんなことができそうだと思いますか? 上田 出来そうなことはたくさんありますが、映画制作に生かすならロケハンに使いたいですね。スタッフも含めて打ち合わせの場にいながら、本当に現地に行ったかのように視察が出来る未来が来るのかなとも思います。会議室などでも、ロケ地の空間を出現させてその場所でリハーサルみたいなこともできますよね。現場でしかわからないこと、予期せぬアクシデントみたいなものってあるじゃないですか。そういう不安要素も拭えるんじゃないかなと思います。 また、リモートで衣装合わせもできそうですね。役者さんやスタッフのスケジュールを合わせるのも結構大変なので、それも実現したら結構助かります。衣装担当の人なんかは、持っていける服の数には限度がありますから、リモートなら試せる衣装の数も増えますよね。あとは、今はビデオ会議での打ち合わせが当たり前ですが、実際に会うのとでは空気感が違いますよね。でも、もしApple Vision Pro を使って打ち合わせするのがあたり前になったら、実際に会っているかのようにコミュニケーションが取れそうだなと思いました。 渡邊 それはできると思います! 他にも仕事で活躍しそうな場面はありそうですか? 上田 僕は普段、アイデアマップみたいなものをノートに書いたりするんですよ。いまは平面で書き留めているアイデアマップなんかも、空中に浮かせて自由に入れ替えたり、眺めたり、その中を歩き回れたら、話し相手とも共有しやすいですし、考えていることがより伝わり、アイデアもまとまり易くなりそうです。考えているうちに、色々やりたいことが出てきちゃいました(笑)。もはやデスクワークは座ってやるものだという常識すらも変わってくるんじゃないかなと思います。世の中から椅子がどんどんなくなっていくかもしれないですね(笑)。みんな立ったり歩いたりしながら仕事するのが当たり前の未来が本当にくるかもしれないです。 渡邊 私たちはいま、ディスプレイとキーボードに縛られている気がするんですよ。表示させたい資料がたくさんある人って、並べるモニターを2台とかに増やしたりするじゃないですか。それの究極系だと思ってるんですね。空間自体がモニターになって、しかもそれを好きな場所に配置することができる。キッチンにメモを置いておいて、仕事場には資料を置いておいて、リビングには趣味のものを置いておくみたいなことが可能になりますから。