本田のミラン移籍 夏と冬のメリットとデメリット
今夏の移籍か。あるいは、来年1月まで待つのか。セリエAの名門ACミラン移籍を巡る報道が依然として錯綜している日本代表FW本田圭佑(CSKAモスクワ)の去就が、19日にひとつの節目を迎える。 ミランは今シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ本戦出場をかけて、20日に敵地で行われる強豪PSV(オランダ)とのプレーオフ第1戦に臨む。登録できる選手数は30人。ミランは29人を登録済みで、キックオフの24時間前までに1人を追加することができる。 これが本田の加入を想定した「枠」だと推測されている。その場合の期限は19日午後8時45分(日本時間20日午前3時45分)だが、現時点で具体的な動きはない。ミランのアドリアーノ・ガッリアーニCEOも、「彼らが放出を望むのなら、夏の移籍市場で獲得できるだろう」とCSKAの決断次第だという立場を変えていない。 本田自身はクラブを離れたい意向を、すでにCSKAのエフゲニー・ギネル会長に伝えている。念願かなって今夏にヨーロッパのビッグクラブの一員となれるのか。CSKAとの契約満了後の来年1月にフリーで加入するのか。それぞれのケースのメリットとデメリットを分析した。
【ケース1 今夏の移籍】
メリットは言うまでもなく、新天地に順応するための十分な時間を得られる点だ。 ミランは今シーズンからフォーメーションを「4‐3‐1‐2」に変更し、昨シーズンは置かなかったトップ下の選手に攻撃を差配させる方針を固めている。現時点では、10番を背負う元ガーナ代表のケビン・ボアテングとU‐21イタリア代表のリッカルド・サポナーラの2人が候補に上がっている。 しかし、ボアテングはトップ下の適性に欠けるとされ、イタリアのスポーツ紙『コリエレ・デロ・スポルト』も8月に入って他チームへ放出される可能性があることを報じている。将来を嘱望される21歳のサポナーラは、ミランにおける出場歴がゼロ。経験の部分で心もとない。 本田が食い込む余地は十分にあるが、ミランはすでに7月8日に新シーズンへ向けて始動している。今月25日にはセリエAの開幕も迫り、チームの陣容を固める時期に入っている。現場サイドとしても、去就がはっきりしない本田を待っている時間はない。 実際、ガッリアーニCEOも最近になってこのように語っている。 「時間が過ぎるにつれて、我々にとって興味深い取引ではなくなってくるのは明らかだ」 CSKA側が設定した本田放出への違約金は500万ユーロ(約6億5000万円)。選手にとって違約金の額はステータスのひとつになるが、今回のミランとCSKAの交渉の経緯は本田にとってデメリットとなりかねない。 日本サッカー協会公認の選手エージェントの一人は、次のように指摘する。 「ミラン側が提示した金額とは、日本円にして1億から2億の開きがあったと報じられています。あくまでも一般論ですが、ミランが本当に本田選手のことを欲しいと考えているのならば、いかに財政難にあるといえども、そのくらいの金額はすぐに上乗せするはずです。こうした問題で長引いているとしたら、間違いなく移籍市場において本田選手のイメージダウンにつながってくる」