本田のミラン移籍 夏と冬のメリットとデメリット
【ケース2 来年1月の移籍】
本田とCSKAの契約は12月末をもって満了する。1月以降は違約金が発生しない、いわゆるフリートランスファーで他チームへ移籍できる。 ミランにとっては元手をかけずに本田を獲得できるメリットがあり、本田にとってもミランに縛られることなく、自らの意思で交渉するクラブを選ぶことができる。 ちなみに、ミランが今夏の本田獲得のために捻出していた違約金の一部が、来年1月に加入する本田の250万ユーロ(約3億2500万円)とされる年俸に上乗せされることはない。 しかし、ミランへの移籍を果たしても、実際にはデメリットの方が大きくなる恐れがある。セリエAのウインターブレークは12月23日から1月5日までと短い。新天地に順応する時間が限られている上、シーズン途中の加入は即戦力の期待をより大きくかけられる。プレッシャーも並大抵ではないだろう。 加えて、昨シーズンのロシアリーグを制し、今シーズンのチャンピオンズリーグ本戦への出場権を獲得しているCSKAが9月以降のグループリーグで本田を起用した場合、大会規定により他チームの一員として来年の決勝トーナメント以降には出場できなくなる。ハイレベルのプレー環境を得られなくなるわけだ。 前出の選手エージェントは、W杯ブラジル大会を控えた日本代表への影響も指摘する。 「本田選手が新天地になかなか馴染めず、プレーに精彩を欠いてしまうようならば、日本代表におけるパフォーマンスの低下につながってくる。その前の段階として、CSKAから出たいことをチーム側に次げている本田選手が、年内の試合で干される可能性もなきにあらずかもしれません。そうなれば、試合勘を取り戻すのにも時間を要するでしょう」 結論として、本田がミランへ移籍するとしたら今夏がベスト。来年1月を待てばリスクの方が大きくなる。選手エージェントはこう続けた。 「あくまでも私見ですが、今夏の移籍を希望しているのであれば、CSKAとの契約を今年6月30日までとしておくべきでした。今年いっぱいとした意図がまず分からない。とにかく、ミランへ行くのならば絶対にこの夏にするべきです。違約金に開きがあるのが原因ならば、自らの年俸を下げて、それを補填に充ててでも移籍するべきです。プライドがどうのこうのと言っている場合ではないと思います」 夏の移籍市場が閉じるのは現地時間9月2日。残された時間は決して多くない。 (文責・藤江直人/論スポ、取材協力・弓削高志/イタリア在住スポーツライター)