誤解すると無免許運転に? 法改正により「原付き免許で125ccバイクに乗れる」ウワサの“深層“
【原動機付自転車】は、非常に簡単に運転免許が取得できるということで昔から日本国民の足となっている。『原付き』という略称や『原チャリ』という愛称をお馴染みのことだろう。 【表】二輪車の排ガス規制改正の概要(国土交通省HPより) 道路運送車両法でいえば、総排気量50cc以下(もしくは定格出力600W以下)が「第一種原動機付自転車」、総排気量50cc超125cc以下(定格出力1000W以下)を「第二種原動機付自転車」と分類しており、いわゆる「原付き」と呼ばれているのは前者となる。 免許的にいえば、総排気量50cc以下の第一種原動機付自転車を運転するには、免許証の種類欄に「原付き」とあればいいが、「50cc超125cc以下の第二種原動機付自転車」を運転するには最低でも普通二輪・小型限定が必要となる。名前は似ていても免許制度的にはまったく異なる乗り物といえる。(山本晋也:自動車研究家)
「原付き」で125cc以下のバイクに乗れるようになるうわさの震源地
しかし、長らく排気量50cc以下というエンジンに制限される規格として認識されてきた原付きに、大きなうねりがやってきていることをご存じだろうか。 そうした波をいち早くキャッチしたユーザーを中心に、2023年あたりから「いわゆる『原付き免許(もしくは普通自動車免許)』を持っていれば125cc以下のバイクに乗れるようになる」というウワサが広がっている。 これは単なる希望的臆測ではなく、根拠のある話。警察庁が、現在は排気量50cc以下としている第一種原動機付自転車の基準を「125cc以下」へ改めることについて検討しているのだ。法改正により125cc以下まで排気量を拡大した「新基準原付き」を誕生させるというのは、もはや既定路線となっているといえる。
新基準原付き誕生の背景
こうした新基準原付きが求められる背景には環境対応がある。すでに2025年11月以降にはワンランク上のクリーンな排ガス性能とすることが決まっている。そして、その対応は現行の50ccエンジンでは難しいといわれている。 それはなぜか? 排ガス浄化について少し深掘りしてみよう。 一般論として排ガスをクリーンにするためにはエンジン本体での燃焼制御とキャタライザーなどと呼ばれる排ガスの後処理の両面での対応が必要となる。後者については一般にマフラーと呼ばれる部品の性能を上げれば解決できるようにも思えるが、キャタライザーを機能させるには一定の温度まで上げる必要があり、50cc以下の小排気量エンジンで2025年11月に迫る排ガス浄化規制をクリアするのは難しいというのが、バイク業界のコンセンサスだ。 そうなると、50cc以下の原付きは消滅してしまうことになる。 しかしながら冒頭でも触れたように免許の取得が容易な原付きは、国民にとって日常の足だ。大げさかもしれないが、もし原付きが消えてしまったら一部の国民においては移動権が毀損(きそん)されることになりかねない。 そこで2025年11月からはじまる新しい排ガス規制に合わせて、その規制をクリアしつつ、原付き免許で乗れるバイクが必要となる。【新基準原付き】は、そうした状況を考慮し、『総排気量125cc以下かつ最高出力4kW以下』という条件で新規格をつくり、それについては従来からの「原付き免許」で運転できるようにする、というのが現在の流れだ。