京都で「中秋の名月」を愛で、特別公開中の文化財を訪ねる
最高気温30℃の真夏日が続き、9月になっても秋を迎えた感じがしません。それでも秋空に浮かぶ月は格別なもの。今年の中秋の名月は9月17日(満月は18日)。静やかに輝く澄んだ月を仰ぎ見て、心を整えましょう。京都ならではの観月イベント、9月中に見たいイベントも併せてご案内いたします。(らくたび、ダイヤモンド・ライフ編集部) 【京都】中秋の名月の写真はこちら ● 「中秋の名月」は9月17日 中秋の名月の風習は、平安時代に中国から伝来したといわれています。大河ドラマ『光る君へ』で、主人公の紫式部と藤原道長がひそかに思い合う場面を満月が照らすシーンが幾度となく描かれているように、月のある風景はどこかロマンティック。 この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば 道長の「望月の歌」はあまりにも有名ですが、それを現代の私たちに伝えたのは、何を隠そう、ロバートの秋山さんが演じる人気の“黒光る君”こと藤原実資(さねすけ)がったつづった『小右記(しょうゆうき)』です。この日記によると、ある秋の日、三女の威子を後一条天皇に嫁がせたときの祝宴でお酒をたっぷり召して上機嫌の道長が詠んだ歌なのだとか。 現代の暦では9・10・11月が秋ですが、旧暦では7・8・9月でした。そのちょうど真ん中に当たる旧暦8月15日が「中秋」と呼ばれるようになりました。この時期は一年の中で最も月が美しく見えることから、月を愛(め)でた平安貴族たちから千年の時を超え、いまでも「お月見」の風習として慈しまれています。 月は季節を問わず空に輝くのに、秋の月がことさら美しく感じるのには理由があります。春や夏と比べて、秋は空気が乾燥しているため、夜空に浮かぶ月がよりクリアに。月が昇っていくときの高度と空気中の水分量が関係しているからで、単なる感覚ではなく、科学的な根拠に基づいているのですね。
● 大沢池「観月の夕べ」で中秋の名月を堪能する 京都の観月イベントの中で、最も壮大なスケールを感じられるのが、嵐山嵯峨野の大覚寺(右京区)境内にある大沢池で行われる「観月の夕べ」でしょう。猿沢池(奈良)、石山寺(滋賀)と並ぶ「日本三大名月鑑賞地」として名高い、京都のお月見ベストスポットです。今年は9月15日~17日の午後5時30分から。午後8時30分には受け付けが終わるのでお早めに。 大覚寺の前身は、平安時代初期に第52代嵯峨天皇が営んだ離宮。嵯峨天皇が舟を浮かべてお月見を楽しんだことにちなみ、空想上の動物である龍や鷁(げき)をモチーフにした龍頭鷁首舟を大沢池に浮かべます。残念ながら、舟上でのお茶席はすでに完売しています。 3日間、月を望む場所に設けられた祭壇に、おだんご、芋や豆などの野菜、花を供え、五穀豊穣と人々の幸せを願う満月法会が執り行われます。屋台や京都の名産品を販売するお店も並び、たくさんの人でにぎわいます。 大覚寺の周囲には高い建物がありません。大沢池の畔に立てば、人影も気にならず、東山から昇る月と池の水面に映る月、二つの月を観賞することができます。平安時代の貴族が愛でたのと変わらない、そんな風趣が味わえるのが「観月の夕べ」最大の魅力です。