「路線バスです」高速バスがなぜわざわざ表示する?…じゃあ「乗合」って何? 車体の表記のイロイロ
「乗合」表記とは別に「路線バス」と掲げる高速バスがあるワケ
バスの前扉付近に、「乗合」「貸切」など車両の用途が表示されていることがあります。一方、高速バス車両はこれとは別に、運転席横の窓付近に「路線バス」と書かれていることもあります。確かに高速バスは法令の上では「乗合バス」(一般乗合旅客自動車運送事業)ですし、それを一般には「路線バス」というはず。でも車両によって表示があったりなかったり、用語もバラバラ。どういう経緯があるのでしょうか。 【「乗合」「貸切」あったりなかったり…】いろいろなバスの車体表記(写真で見る) まず「乗合」「貸切」といった表示は、道路運送法施行規則で定められているものです。ただし、乗合バスについては現在では表示が義務ではなくなっており、省略している例も多くみられます。「乗合バス」つまり市内の路線バス、高速バス、空港連絡バスなどは、その行先を車両の前面、左側面、後面に見やすく表示することが通称「バリアフリー法」で定められているため、それらの表示を見れば乗合バスであることは明らかだからです。 乗合以外の、貸切バス、特定輸送バス、自家用バスなどはそれぞれ「貸切」「特定」「自家用」などと表示することになっています。特定輸送バスとは、一つの企業や学校などと契約して、その従業員や学生、生徒、利用者の送迎などに専用に用いるバスのことです(この種の送迎バスは、契約形態により、貸切、特定輸送、自家用いずれも存在します)。 また乗合バスの中でも、東京空港交通の通称「リムジンバス」のように、利用者を空港利用者などに限定していたものは、以前は「限定」と表示していましたが、制度改正によってその表示は現在ありません。 一方、運転席周辺に「路線バス」と表示するのは目的が異なります。この表示は、高速道路の料金支払いの際に有効なものです。
料金所で重要な「路線バス」表示
というのも、NEXCO各社が管理する高速道路では、高速バスの高速道路料金は少しお得に設定されているのです。高速バスで通常使われる全長12mの車両は、本来であれば「特大車」に相当しますから、貸切バスや自家用バスの場合は特大車料金が必要です。しかし、NEXCO各社が旧・日本道路公団だった頃から、「路線バス」は一つ小さい区分である「大型車」扱いとなっています。 「乗合」と「路線バス」。意味合いとしては同じなのですが、元になっている規程(道路運送法施行規則と、NEXCO各社の車種区分表)上の表記が異なるので、車体表示も別々になっているのです。 もっとも今日ではETCが普及しており、高速バス車両はETCをあらかじめ「大型車」とセットしているので、この表示も最近では省略されがちです。以前は入口料金所で通行券を受け取る際に「路線バスです!」などと口頭で伝え、大型車の通行券を出してもらっていました。入口が自動発券の場合、特大車の通行券が出てきてしまうので、出口料金所で路線バスと伝え請求額を修正してもらっていました。 道路公団の車種区分で言えば特大車は3番、大型車は2番なので、「2番でお願いします!」という伝え方も定番でした。 でも、同じ事業者で高速バスと貸切バスのカラーリングが異なる場合などは、貸切だと思ったのに高速バスの続行便(多客日の2号車、3号車)だった、ということもあったはずです。 もちろん、料金所の係員もプロですから、車両前面に掲出された行先ステッカーなどを見て、貸切バス車両でも最初から2番の券が出てくることも多くありました。筆者(成定竜一・高速バスマーケティング研究所代表)は大学生の時に車掌業務(貸切バス車両を高速バスとして使う場合に、運賃箱や車内放送機器などが設置されていないため、同乗して運賃収受や放送などを行う仕事)のアルバイトをしていましたが、よく料金所の係員の側から先に、「2番ねー」とか「2番? 3番?」などと声がかかっていたのを覚えています。 では、今日では「2番」と伝えることが全くなくなったかというと、そうでもありません。