「よろしかったですか」「担当者にうかがってください」 若者の「ヘンな敬語」なんとかならないの
お笑いコンビ「サンドウィッチマン」がハンバーガーショップを舞台にしたコントに、こんなやりとりがある。意味がよく分からない、何が面白いのかという質問が、時々ネットに現れて話題となる。 サンドウィッチマンもびっくり?のヘンな敬語 店員「お飲み物、バナナシェイクでよろしかったですか?」客「オレ、その言い方、大っ嫌いなんだよな。言い直せ」店員「はい、お飲み物、バナーナシェイクで...」客「そこじゃねーわ! よろしかったですか?のとこだよ」 敬語のつもりで「よろしかったですか」と過去形にしたことが違和感を招いている。現在の状況だから「よろしいですか」「よろしいでしょうか」が正しい。 若者が接客のアルバイト中に使う独特の言葉遣いもよく問題にされる。「バイト敬語」「マニュアル敬語」とも呼ばれている。 近年は、若い人たちの敬語の使い方がお笑いの人気ネタである。 ■若い世代「敬語は苦手」と自覚 文化庁の「国語に関する世論調査」(2021年度)によると、言葉や言葉の使い方について「社会全般で課題があると思う」と答えた人は8割を超えた。その理由について43.2%が「敬語の乱れ」をあげている。 「自分自身に課題があると思う」と答えた人も7割近くにのぼり、その46.4%が理由として「敬語を適切に使えない」を選んだ。年代別にみると10代から30代で5割を超えており、若い世代が、敬語は苦手だと自覚している姿も浮かぶ。 社会に出て日の浅い人は、うっかり敬語を間違いやすい。 例えば、取引先から電話で「〇〇部長はいらっしゃいますか?」と聞かれ、「部長は、いらっしゃいます」と答える。社外の人に向かって、自分の上司に敬語を使うのは適切ではない。 取引先の質問に「それは担当者にうかがってください」と言う。「うかがう」は「尋ねる」の謙譲語なので、相手がへりくだる形になってしまう。「お尋ねください」なら失礼にならない。
敬語が多くなりすぎてヘンテコに
ていねいに話そうとして敬語が多くなりすぎると、まわりくどく不適切な表現とみなされる。「校長先生がその本をお読みになられる」のように、同じ種類の敬語を二重につかうことを「二重敬語」という。「読む」を「お読みになる」と尊敬語にして,さらに尊敬語の「......れる」を加えている。また、「ご注文をお承りいたしました」もかなり過剰な印象を与える。「ご注文を承りました」とシンプルにできる。 敬語はなぜ大切なのだろう。国の文化審議会の答申「敬語の指針」は三つの点をあげている。 (1)相手や周囲の人やその場の状況について、「敬い」や「へりくだり」などの気持ちを表現する。コミュニケーションを円滑に行い、確かな人間関係を築く。(2)人と人が互いに認め合い、尊重し合う「相互尊重」を基盤とする。(3)自分の気持ちに即した、より適切な言葉遣いを選ぶという「自己表現」をめざす。 誤用や過不足を避けるため、敬語の知識や考え方を身につけることが必要。 「敬語の乱れ」が気になる人は多い。ビジネスマナーとして敬語の使い方を社員研修でとりあげる会社もある。より良いコミュニケーションのために、気持ちを適切に表す「自己表現」だからである。 (ジャーナリスト 橋本聡)