【37年半ぶりの高値更新】再び「1ドル160円台」へ突入したが…国際金融アナリストが「近いうちに米ドル安・円高に向かう」と予想するワケ
このまま「1ドル=250円」へと向かっていくのか
のちに振り返ると、そのようになっている可能性はあるかもしれません。ただし、このまま、160円の次の大台である170円も超え、大きく円高に戻すことなく、200円、さらに「プラザ円高」の全値戻し、250円へと向かう可能性は考えにくいでしょう。 例えば、1990年の160円は、5年MA(移動平均線)を小幅に上回ったにすぎませんでした。そして、1985年の250円ですら、5年MAを1割程度上回ったにすぎませんでした。これに対して、足下で160円を超えてきた米ドル/円は、すでに5年MAを3割近くも上回っています(図表2参照)。 1980年以降に、米ドル/円が5年MAを3割以上上回ったのは、3回しかありません。すなわち、すでに足下でも米ドル/円は、循環的な高値の限界圏にありそうです。仮に、当面において、170円まで上昇する場合、それは、5年MAを35%以上も上回る計算となります。それは、1980年以降でも未体験の事態です。 要するに、これまでに経験したことがないほどに、米ドル/円が「上がり過ぎ」拡大に向かわない限り、170円を目指すことにはならないと考えられます。 以上のように、1990年の高値を超え、1986年以来約37年ぶりの水準まで上昇してきた米ドル/円ですが、このままさらなる上昇が続くのは、そう簡単ではない可能性があります。その理由とは何か?
米ドル円がこのまま上昇を続ける可能性は低い?
米ドル/円は、これまで見てきたように、約37年ぶりの高値まで上昇してきましたが、それは、2023年までとは異なり、日米金利差からは大きくかい離したものでした(図表3参照)。 この日米金利差からかい離した、米ドル高・円安をもたらしたのは何でしょうか? それについては、投機筋の円売り急増の影響がありそうでした。短期売買を行う投機筋からすると、日米10年債利回り差の「円劣位」が3%以上もあるなかでは、それが少し縮小しても、円買いには不利、円売りに有利な状況には変わりません。そして、そういった状況が長期化し、日米金利差の変化に関わらない「投機筋の円売り」が続いたことで、日米金利差からかい離した円安が広がった可能性があります。 以上のように、1990年の高値を更新した米ドル/円ですが、さらにどこまで広がるかを考えるうえで注目されるのは、投機的円売りがどこまで続くか、ということではないでしょうか。 投機筋の円ポジションは、CFTC統計の投機筋の円売り越しが、先週にかけて17.3万枚まで拡大しました。2022年4月や2006年7月に記録した18万枚程度の過去最高値に、ほぼ肩を並べたといってよいでしょう(図表4、5参照)。 以上のように、米ドルとそれ以外の通貨に対して、円安がさらにどれだけ続くかの鍵になる、金利差の大幅な「円劣位」を拠り所とした投機筋の円売りは、すでに過去最高規模に達した可能性があるといえます。ということは、さらなる米ドル買い・円売りにおいて、おのずと限界があると考えられます。