“日本版デップー声優”加瀬康之、膨大なセリフ量に「気が変になりそうでした(笑)」<デッドプール&ウルヴァリン>
マーベル・スタジオ最新作映画「デッドプール&ウルヴァリン」が7月24日に日本で世界最速公開され、オープニング5日間で興行収入8億788万円、観客動員数49万1342人を記録した。全世界の興行収入は4億3830万ドル(※約670億円)を超え、2024年に公開された作品ではNo.1のオープニング成績に。R指定(※R15+)映画としても歴代最高のオープニングを叩き出した。(BOX OFFICE MOJO調べ/1ドル=153円換算:7月29日時点) 【写真】「デッドプール&ウルヴァリン」でも相変わらず自由&よく喋る&おちゃめで強いデッドプール 同作は映画史上最も破天荒な2大ヒーロー、デッドプール(ライアン・レイノルズ)とウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)がタッグを組み、世界の命運を懸けた壮大なミッションに挑む。今回は日本語吹替版のデッドプール役・加瀬康之、ウルヴァリン役・山路和弘、そして2人に立ちはだかる“ドSヴィラン”カサンドラ・ノヴァ役を務める佐倉綾音の3人に、小ネタ満載の本作の魅力やそれぞれにとっての“ヒーロー”などについて語ってもらった。(以下、今作のネタバレに触れる部分があります) ■2024年のオープニング興収記録を更新 ――「デッドプール2」(ディズニープラスで配信中)から数えて6年ぶりの“デップー”映画最新作「デッドプール&ウルヴァリン」が7月24日に日本先行公開され、大ヒットを記録しています。 加瀬:公開記念イベントで、MCのサッシャさんが言っていましたが、今年のオープニング興収記録を塗り替えたんですよね。それだけ期待というか、注目されていたんだなと思うとうれしいです。 ――デッドプールとウルヴァリンという組み合わせも興味深いですよね。 山路:最初にこの作品が製作されるというのを聞いたとき、ビックリしました。「ウルヴァリンは(『LOGAN/ローガン』で)終わっただろ!?」って。「あれで死んじゃったじゃん!」って思っていたので、またこういうふうになるとは思っていなかったです。これまでの作品との関わりとかもいろいろ出てきますし、登場キャラクターも多いですしね。 加瀬:デッドプールは相変わらずといえば相変わらずです。フォックスからディズニーになっても変わってないですね。 ――“第四の壁”も越えて語り掛けるのもおなじみですね。 加瀬:それもデッドプールの魅力というか、大きな特徴ですからね。あれは本来絶対に越えられない壁のはずなんですけど…。 佐倉:私、その意味を知らなくて、一生懸命調べました。まとめてくださっている方がいらっしゃって助かりました(笑)。 加瀬:見ている人に話し掛けるキャラクターなので、いろんな状況説明もしてくれたりしますし、それ以外のキャラもそれとなく説明してくれたりする場面もあるので、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の他の作品を見ていなくても楽しめる感じになっています。 ――佐倉さんは“カサンドラ”役で、今作のヴィランですね。 佐倉:マーベル作品としては、去年「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3」で“ライラ”というキャラの吹替えを担当させていただいたのですが、今回、また一つ思い出が増えました。しかもヴィラン! 敵役(加瀬と山路)が大先輩過ぎて、それだけで「勝てるかな?」と不安でしたけど(笑)。 加瀬:いやいや、十分でしたよ。 佐倉:ありがとうございます(笑)。もちろんカサンドラは勝つ気満々、自分の目的を果たす気満々だったので、その“圧”や“強キャラ感”をしっかりと出せるように、大きなプレッシャーの中で臨みました。そもそも吹替え経験がまだ浅いので、生身の人間に声を当てる難しさからひもといていき、とても興味深く、印象深いキャラクターになりました。 ■過去作との“変化”について ――加瀬さんと山路さんは今回の作品でのアフレコでこれまでと変えた部分はありますか? 加瀬:特に変化を意識したわけではないんですけど、6年ぶりですからね。その年月を考えると、「デッドプール2」が公開されたときに小学校高学年だった子や中学生だった子が今回は映画館で見られるんですよ。 佐倉:あぁ!そうですね! 山路:時間というか、歴史を感じるなぁ。 加瀬:その子たちが見たときに、分かりやすいような日本語版を作りたいとは思っていました。大人の人たちは「1」「2」と経ているので、「今回もぶっ飛ばしてるなぁ」って感じで見てもらえると思うので、“15歳の壁”を越えて初めて見るような若い子たちに「今っぽいな」って感じてもらえたらと。 ――ウルヴァリンに関してはどうですか? 山路:デップーがあれだけ喋ってしまうので、喋ろうとするんだけど喋られてしまう、みたいなやりとりが多いんですよ(笑)。 加瀬:ウルヴァリンが喋っている量も少なくはないんですけど、デップーがずっと喋っていて、僕も自分の声をずっと聞かされる感じで気が変になりそうでした。「うるせえ!」って(笑)。これ、自分(の声)だからかな? 佐倉:私は加瀬さんの声、ずっと聞いていられます。 山路:僕も気にならないよ。慣れちゃったのかな(笑)。 佐倉:加瀬さんのお芝居って、ある意味、淡々としているのでスルスル入ってくるんです。 加瀬:いやぁ、でもあらためてこんなに喋ってたっけ?みたいに感じたんだけどね。じわじわとダメージを受けました(笑)。 佐倉:多分、ご自身の声だからそう感じられたんだと思います。むしろ加瀬さんの吹替えでさらにデップーが好きになりました。 加瀬:ウルヴァリンとカサンドラがかっこいいキャラだから、対照的なデップーの特徴というか、喋りも含めた個性がより強く感じられたような気がします。 ■佐倉「エマ・コリンさんが本当におきれい」 ――カサンドラは強いですし、格好良さもありますよね。 佐倉:カサンドラを演じられているエマ・コリンさんが本当におきれいで、ご本人の声もとてもすてきなんです。 加瀬:じゃあ、エマ・コリンさんの声を今後もずっと。 佐倉:そうなれたらうれしいですね(笑)。今回の作品だと剃り上がった頭もお似合いなので、“髪が生えたらどんな感じなんだろう?”と考えていました。 山路:確かにとても似合っていて、きれいな方だなって思いました。 佐倉:役柄的にも嫌いになりきれないヴィランというか、愛嬌(あいきょう)もあって、妖艶さも相まって、「この人、そんなに悪い人じゃないかも」と思わせてくれる感じがしましたね。 加瀬:マーベルのヴィランって、そういうキャラが結構多いよね。 佐倉:ヴィランにも理由がある、という感じですよね。 山路:佐倉さんはあまりヴィランというか敵役、悪役はやらないの? 佐倉:まだ少ないです。 山路:僕なんか悪役ばっかりだから(笑)。 加瀬:俺とか山路さんは“ゴッドファーザー”的な声質だから、そっちのほうが多い。でも、敵役とかヴィランって楽しいでしょう? 佐倉:楽しいです! ――佐倉さんは「デッドプール」と「ウルヴァリン」に対して、どんなイメージを持っていましたか? 佐倉:「デッドプール」はこれまでに見たマーベル作品の中で1、2を争うくらいに好きなんです。 加瀬:へぇ! こんなにたくさんあるのに? 佐倉:はい(笑)。キャラクターだとロケット(『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』)とデップーが好きで。 加瀬:アライグマの? 佐倉:はい。 加瀬:どっちも口が悪いキャラだなぁ。 佐倉:ユーモアがあるヒーローがとても好きみたいで、ブラックジョークやメタファー的な表現にいつのまにか惹かれてしまいます。 山路:ヴィラン的要素があるのかもよ。 加瀬:本質的なものはそっちかもね(笑)。 佐倉:では、これからはそういう方向で(笑)。そして、ウルヴァリンはデッドプールとは一番遠いところにいるキャラなのかなと感じました。基本的に寡黙ですし、戦闘スタイルも対照的だったりしますし。 加瀬:そうだね。デップーはあれでもスタイリッシュな戦い方を目指しているからね。 佐倉:そんな対照的なキャラが、今作で一緒になって戦うところが見られて本当に良かったです。 ■ライアン・レイノルズの強いこだわり ――今回もいろんな小ネタが満載ですよね。 山路:デッドプールを演じているライアン・レイノルズのこだわりが感じられました。製作にも入っていますし。 加瀬:セリフでも「フォックスよ、永遠に」っていうのがありましたけど、フォックスからディズニーさんへのバトンを渡したような映画でしたね。 ――見どころもたくさんありますが、特に好きなシーンは? 加瀬:たくさんあるんですけど、ウルヴァリンと車の中でケンカをするシーンですかね。一昼夜ケンカして、ぐったりしているんですけど、“何やってるんだ、この2人”って感じで好きですね。あとは、カサンドラに初めて頭の中をグイッてやられたシーンかな。 佐倉:頭の中にグイッと入るシーンですね(笑)。 加瀬:あの映像を最初に見たとき、自分がされているかのような感覚になったんです。「なんだこれ!」って。そのときのライアンのアドリブに合わせて声をあてたんですけど、リアルな感情だったと思います(笑)。 佐倉:その“グイッと”に関して言うと、別の人物の頭にグイッとしたときにカサンドラが「うわ、最悪!」と言うシーンがあって、最悪なときと最悪じゃないときがあるんだな…?と思ったんです。何が違うんだろう、と。魂が汚れていたり、邪悪な考えを持っていたりすると“最悪”な感じになるのかなと。 加瀬:そう考えるとカサンドラって人の記憶をのぞけるもんね。言われてみれば、そのシーンの反応、面白いなぁ。カサンドラ、いい奴じゃん! ――最後に、スーパーヒーロー作品ということにちなんで、皆さんにとっての“ヒーロー”、あるいは“理想のヒーロー像”を教えてください。 佐倉:私は両親です。 加瀬:いいなぁ。どうやったら「両親」って答えられる子に育つの? 山路:本当だよ。 佐倉:いえいえ、適度な距離感ですかね(笑)。それをうちの両親はうまく保ってくれているので、ずっと憧れのままです。 ――山路さんは? 山路:うちの近所で花火大会があって、いろいろ出店がある中で金魚すくいもあったんです。うちのカミさんは金魚すくいが得意で、たくさんすくうからあっという間に子どもたちに囲まれて。それを見て「うちのカミさん、ヒーローだな」って思いました(笑)。すくった金魚は、水槽に入れて家で飼っています。 加瀬:へぇ、すごいなぁ。 ――加瀬さんは? 加瀬:自分が吹替えをやらせてもらう役者さんかな。いい役でも悪い役でも、「やっぱりすごいんだな、この人たちは」って吹替えをやりながらいつも思うんです。ちゃんとその姿をお借りして吹替えでもいい作品を作れたらなと思いながらやっていますから。その俳優の方たちが僕にとってのヒーローです。 ――ありがとうございます。役について、小ネタについて聞かせていただいたので、もう一度見返したくなりました。 加瀬:本当に盛りだくさんですからね。読者の方にもこの作品を見ていただきたいですし、既に見た方も一度と言わず何度でも見てください(笑)。 ◆取材・文=田中隆信