雑誌の休刊が相次ぐいま、鉄道会社の「車内誌」に集まる注目 多ジャンルの愛好家から一目置かれる「企画力」とは
2種類の車内誌が読めるお得な北陸新幹線
金沢~敦賀駅間の延伸開業で盛り上がっている北陸新幹線は、お得な新幹線である。座席前のポケットに、JR東日本の「トランヴェール」とJR西日本の「西Navi」が入っていて、異なる鉄道会社の車内誌が2冊読めるのだ。いずれの車内誌も、新幹線に乗車すれば無料で持ち帰ることができる。JR東日本とJR西日本のエリアを直通する新幹線ならではのメリットと言っていい。 【写真】漫画ファンをざわつかせた「シャーマンキング」のキャラクター・恐山アンナが描かれた「トランヴェール」
さて、「トランヴェール」も「西Navi」も、沿線の景勝地や歴史的建造物、美術館・博物館などの見どころを紹介しているが、誌面構成は大きく異なる。「トランヴェール」は毎号、沿線にゆかりのあるテーマで特集を組み、2~3部構成で深掘りしている。対する「西Navi」は読み物が少ないパンフレットに近い構成で、デザインもカジュアルな雰囲気だ。 SNSを見ると、こうした新幹線の車内誌や飛行機の機内誌には、一部に根強いファンがいることがわかる。その要因は、編集者の裁量次第で、なかなかお目にかけることがないマニアックな記事が読めるためである。持ち帰られた部数はカウントしていると思われるが、書店で販売されている雑誌ほど気にする必要がないため、挑戦的な企画を作ることができると考えられる。
アニメ雑誌もできない特集が目白押し
例えば、「トランヴェール」は地学の愛好家から一目置かれる存在である。地学ブームを巻き起こした「ブラタモリ」のはるか前から地学の特集を組み、化石、地層、火山などのテーマを広範囲に扱ってきた。地質時代の一つがチバニアンと命名された際は大々的な特集を企画し、登録に関わった研究者のインタビューから学術的な価値まで解説している。そのマニアックな内容は完全に車内誌の域を超えていると言っていいだろう。 現在は見られなくなったが、「トランヴェール」は漫画・アニメファンをざわつかせる特集をいくつも企画していたことでも知られる。「週刊少年ジャンプ」で連載され、アニメ化もされた「シャーマンキング」を描いた漫画家・武井宏之氏が故郷の青森県にある円空仏を旅する特集は、SNSでバズりにバズった。表紙には武井氏が描き下ろした「シャーマンキング」のキャラクターを掲載したため、インパクトも抜群だった。 長野県の妖怪を特集した際は、「けものフレンズ」で有名なアニメ監督・たつきのイラストを掲載した。これもSNSを中心に大いに反響を呼び、“けものフレンズ”ならぬ“ばけものフレンズ”だとして人気になった。また、宮城県が舞台になったアニメの“聖地”が特集されたこともある。このときは声優アイドルグループ「Wake Up,Girls!」のメンバーである永野愛理がアニメのゆかりの地を巡る構成をし、こちらも話題になった。