《性被害裁判 異例の逆転勝訴》わいせつ男性教諭の“嘘”を暴いた「クラスメートの新証言」 性被害から20年
小学生時代、担任だった男性教諭から性暴力を受け、後遺症に悩まされていた石丸素介さん(40)。この男性教諭を相手に勝つ見込みの少ない裁判を戦っていた。だが、彼が勇気を振り絞って訴えた「実名・顔出しの告発記事」がきっかけとなり、新たな証人が現れた。性暴力の実情を長年取材するジャーナリストの秋山千佳氏の徹底取材。 【画像】賠償金2002万円の支払いが命じられた ◆◆◆
「十中八九負けます」
2024年3月26日。 東京高等裁判所で、ある裁判の二審(控訴審)判決が言い渡された。 控訴人は石丸素介、40歳。 小学校4~6年生の間、男性担任教師から陰部を触られたり全裸にされたりする性被害を受け続け、重い後遺障害を抱えている。2004年に今の主治医の初診で初めて被害事実を打ち明け、2020年に裁判所へ訴えた。 「十中八九負けます」 と弁護士に言われた時には、こう返した。 「慰謝料よりも、相手が事実を認めて謝ってくれればそれでいいんです」 だが、元担任が性加害を全面否認し、調停は不成立に終わり、一審は証拠不十分で敗訴。 諦めかけたが、弁護士や母親に支えられて控訴した。 さらに法廷の外でも、実名告発に踏み切った( 当連載第1回参照 )。 二審の判決当日、石丸は自宅で弁護士の電話を受けた。 緊張した石丸の耳に、勝訴という言葉が飛び込んできた。現実感を持てないまま電話を終え、追って弁護士から送られてきたメールを開くと、判決文の主文が目に入った。 「被控訴人は、控訴人に対し、2002万円及びこれに対する平成16年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え」 慰謝料と利息を合わせ、約4000万円の支払いが命じられていた。 30年ほど前の性被害の事実と、後遺症の損害賠償を認めるという、画期的な判決だった。 ようやく石丸の胸に、安堵と感謝の念がじわじわと湧いてきた。 石丸は今、「声を上げて本当によかった」と語る。 「実名告発したことで、卒業後に縁が切れていた小学校時代の友人たちと繋がることができて、裁判で証言してもらえることになって……。彼らにはすごく感謝しています」 彼らの証言は、元担任が主張してきた数々の“嘘”を暴く結果となった。 それどころか、石丸を含め、少なくとも4人のクラスメートが性被害に遭っていたことが明らかになったのだ。