「AIで延長した動画は報道に使える?」Adobe、生成AI機能に透かしシステム導入しコンテンツの真正性と作業効率化の両立へ
■CAIでコンテンツの真正性を確認 アドビのデジタルメディア事業部門代表のデイビッド・ワドワーニ氏は「生成AIはツールであり、人の創造性を置き換えるものではない」と言う。アドビにおいては、生成AIがクリエイティブを行うのではなく、あくまで人のクリエイティブを手助けするのが生成AIなのだ。 だから、多くのクリエイターと相談し「映像で2秒、背景音で10秒」に決めたとのことなのだ。「このカットがもうちょっと長ければ」というニーズは確実にある。
また、アドビはカメラメーカーなどクリエイティブにかかわる約3700社とともに、「コンテンツ認証イニシアチブ(Content Authenticity Initiative= CAI)」という、デジタルコンテンツの透明性を確保する業界標準を推進している。 この仕組みを使えば、デジタルデータに、透かしのように撮影者、使ったカメラ、編集者……などの製作者情報を暗号化して埋め込むことができる。 ますます混迷の度合いを深めていくデジタルコンテンツの真正性、権利者情報に一石を投じる取り組みだ。
解像度や形式を変更して保存し直しても、この「デジタル透かし」は残り続ける。 たとえば、表示して画面キャプチャを撮るなど、元データを回避する手立てが取られても、元データが先に登録されていれば、本来の著作権者を優先できるように管理されることになっている。 この機能を利用して、アドビの生成AI機能を使って制作したコンテンツには、「生成AIを利用して制作した」という、データ的に見ればわかる「デジタル透かし」が入るようになるのだ。
報道などに使用できない仕組み……ではなく、あくまで権利者を調べることができる仕組み……ではある。 アドビの主張としては、アドビのソフトウェアはあくまでツールなので、「すべてのニュース映像に使うことを禁じるべきなのか?」「どこまで生成AIを使っていいのか?」は、あくまで利用者側の判断ということになる。 ニュース映像でも尺を調整するぐらいはいいのか? 一切ダメなのか? 報道はダメだとしてもバラエティ番組ならいいのか? などは、これから利用者側のモラルとルール作りが必要になっていくことだろう。CAIはそうした時に拠り所となる仕組みだ。