日本ラグビーが“世界のクラブ大会構想”リードできるか? 「クロスボーダーラグビー」開催の是非
来日経験、もしくは日本企業との連携強化を求める海外勢
日本側の念願かなって実現したCBRには、相手にもメリットがあった。 ボーデン・バレット。愛知のトヨタヴェルブリッツ所属の32歳は、ニュージーランド代表として123キャップ(代表戦出場数)を得た立場で指摘する。 「スーパーラグビーはこのCBRのような取り組みをもっとしていかなくてはいけません。南アフリカが大会を出たため、スーパーラグビーは以前と同じものではなくなっています。選手にとっても、(普段と)違うチームと対戦するのはいいことです」 スーパーラグビーでは日本が撤退したのとほぼ同時期、目下ワールドカップ2連覇中の南アフリカ代表を支える主要クラブも欧州リーグへ移転。ラグビー王国と呼ばれるニュージーランドとしても、新たな刺激が欲しかった。 何より先方に期待されたのは、文化的、経済的な利点だ。振り返ればサンウルブズがあった時代、来日経験、もしくは日本企業との連携強化によさを覚えるクラブがあったものだ。 特にいま、スーパーラグビーの財政状況について芳しい声は少ない。ブルーズのバーン・コッター ヘッドコーチは、CBR出場の意義をこう捉えていた。 「日本の皆さんといい関係性を持てるようになる意味合いも重要です」
将来を見据えた「投資」の手応えと課題
今回のCBRは、スーパーラグビーのプレシーズンに行われた。参加2チームは2月下旬から始まるリーグ戦を前に、キャンプ形式で調整できた。遠征メンバーには、自国の規定を鑑みCBRへ出ない現役代表戦士も含まれた。両チームが泊まったのは、関東地区の高級ホテルだった。 渡航費、滞在費の出どころについて、リーグワンで重役を担う東海林は「やり取りのなかの話なので、申し上げることはできないです」と話すにとどめたが、別なやりとりではこう応じた。 「将来さらに大きくなるための礎として『まず、やる』ということで、いまこの時点においては投資的な側面もあります」 この「投資」は、確かにリターンをもたらした。 今回を機に、世界と自分との距離感をつかめたと実感した選手は数多くいた。高強度のゲームを経験したうえで、早速、普段の練習内容を見直した代表経験者もいる。 一方、課題も生まれた。 スーパーラグビー勢にとって本番前の腕試しにあたるCBRは、日本側にとってはレギュラーシーズンの中断期間中の非公式戦だった。 試合結果はリーグの星取表に影響が出ないため、故障に不安のある選手をフィールドに送り出せないクラブもあった。そのクラブは最善手を打った格好だが、国外強豪との真剣勝負を望む愛好家が「ベストメンバーを出すべきだ」と主張するのは避けられなかった。 国際試合とあって、チケット代は国内戦と比べて高額だった。その価格に見合った舞台をつくるには、リーグワン側、出場クラブが再度コミュニケーションを図らねばなるまい。