米国から離れる中国、しゃしゃり出るロシア 対北朝鮮対応でズレる思惑
北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射は、国際社会の足並みの乱れを露見させています。米国と協調して北朝鮮への圧力をかける姿勢を見せてきた中国がここへ来て態度を変え、これまで北朝鮮問題に積極的に絡んでくることはなかったロシアも関与を強めようとしています。中国とロシアの思惑を中心に、元外交官の美根慶樹氏に寄稿してもらいました。 【写真】米国の「レッドライン」は……ICBM発射、足元見る北朝鮮
北朝鮮問題にまで絡んできたロシア
北朝鮮は7月4日、米国側のレッドラインと目されてきた大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に踏み切りました。これは深刻な問題であり、国際社会が一致して対応しなければならないはずですが、残念ながら、主要関係国の足並みは乱れてきました。 その象徴的な表れが、翌日に国連本部で開催された安全保障理事会の緊急会合でした。安保理では、これまで北朝鮮が核やミサイルの実験を行うたびに決議、あるいは報道声明を行ってきました。今回は、これまでのどの実験よりも大きな問題であるICBMの発射実験でしたが、その対応をめぐり各国は合意できませんでした。 北朝鮮問題は安保理会合の直後にドイツで開催されたG20首脳会議、またその際に行われた日米、日韓、米韓、米ロなど個別の会談でも話し合われました。これらの会議では関係国間の連携を強化するなど意見が一致したと盛んに言われましたが、実質的な内容は乏しく、かえって各国間の立場の相違をさらけ出した印象です。 安保理が失敗に終わった原因は、第1に米国作成の決議案について、ロシアがICBMではなく中距離弾道ミサイルであると主張し、制裁の強化に賛成しなかったからであり、第2に中国も制裁強化に賛成しなかったからでした。 ロシアは従来、北朝鮮の核・ミサイル問題について、自国の見解を強く主張することはありませんでしたが、今回の安保理では急にしゃしゃり出てきて米国作成の決議案の修正を強く求めました。ロシアが積極姿勢に転換した背景には、貨客船万景峰(マンギョンボン)号の定期運航開始にみられるように、北朝鮮とロシアとの関係緊密化があると見られています。 従来、国際的に北朝鮮の立場を擁護するのは事実上、中国だけでした。しかし、北朝鮮は金正恩委員長の下で中国に不満を示すことが多く、特にトランプ政権下で米中が協力して北朝鮮に対する圧力を強化する姿勢を見せるようになったことから、北朝鮮は一層ロシアの方を向くようになったのです。 注意すべきは、ロシアが中東問題と同様、北朝鮮問題についても米国との関係全体を踏まえて行動するようになっていることであり、単純化して言えば、米国の勝手にさせないという気持ちが出てきていることです。