中学受験が「課金ゲーム」と言われる理由を、「不安な親」が体感した日
中学受験をリアルに描き人気のコミック『二月の勝者』(高瀬千帆/小学館)にはこんなセリフがある。 【マンガ】受験生以外にも響く!中学受験を舞台とした『二月の勝者』12の名言 「君達が合格できたのは、父親の『経済力』そして母親の『狂気』だ」 2021年に放送されたドラマ『二月の勝者』でも、携帯ゲームばかりしている夫に母親が「どうせなら、私たちの子どもに課金してよっ! 自分の子どもをクッソ強いキャラに育ててよ!」と言ったシーンも大きな話題となった。 こんな「中学受験の課金ゲーム」について体感したというのが、元大手証券ディーラーの森将人さん。慶應義塾大学を卒業し、自分の子も「早慶でいい」と思って軽い気持ちで中学受験の入り口に立った。しかし、様々なことを考えさせられたという。 「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」 小学生のときは、まだ自分の意思だけで将来を選ぶことは難しい。義務教育の中学で「受験をする」選択をし、「受験勉強させ続ける」ことを導くのも、親が大きくかかわってくる。だからこそ「親のエゴ」を認識したうえでともに成長できるかどうかが重要になってくる。 「親のエゴ」を認識したうえでの森さんはどうして「中学受験をしてよかった」と思えるまでに至ったのか。率直に綴る連載4回は、「お金と不安」について伝える。
レギュラー授業以外にどんどん増える授業
レギュラー授業に加えて、休み中の集中講習や志望校別対策。 塾は中学受験に向けて手厚いサポートをしてくれるが、それだけで対策が万全という受験生はどれだけいるだろうか。補習塾や家庭教師をつけることが少なくないが、その必要性をぼくが理解したのは6年生も二学期の後半になってからだった。 孝多(仮名)は授業の内容に追いついていくのに精いっぱいで、わからない問題を聞く時間もなければ苦手な分野を補強する余裕もなかった。理解したことを身につけるためのサポートが不可欠で、効率的に学習するには個別指導が最適だった。 孝多は11月から、通常の塾に加えて個別指導塾のトーマスに通いはじめた。週に1回か2回。算数と苦手な理科を聞ける先生がいい。毎回同じ先生に担当して欲しいが、人気のある先生のスケジュールはすでに埋まっている。日程優先で枠を抑えた。 年末からはじめたのが家庭教師だ。派遣会社に登録すると、講師のプロフィールが送られてきた。推奨されたのは、大学を卒業してから塾の講師を長く勤め、今では個人指導に専念している先生だ。合格させた生徒の実績も豊富な、受験指導のプロフェッショナルだった。 塾からは補習塾も家庭教師も止められていたが、本番まで1ヵ月を切っている。少しでも得点を伸ばすためと思うと、一時間で7000~8000円かかる授業料も気にしている余裕がない。孝多は集中力がなく切れやすいが、お調子者で暗記力に強みがある。子どもの性格は、事前に妻から伝えていた。 承知いたしました。メールに書かれたシンプルな回答が心強かった。