「ディズニーはお泊りがマスト...!?」名門私立小の休日の遊び方に、新参母が驚きを隠せない理由とは?
私はさもおかしい、という調子で笑いとばした。そんなことしたら1日で10万円は吹っ飛ぶに違いない。 でも、7歳でお友だちとディズニ―に行けることがどれほど胸躍るイベントか、私にだってよくわかっている。楽しい体験を共有して、1日でぐっと仲良くなるだろうし。せっかく誘ってもらえたし、お友達ともっと絆を深めてほしい。 小学校受験を決めた理由のひとつは、一生続くお友達ができると思ったから。その第一歩として、豪華ホテルに泊るのは無理でも、ディズニーくらい一緒ににいかせてあげたい。 私はPCを見つめ、仕事のやりくりに頭を巡らせた。平日に1日中子どもの遊びに付き添えるなんて、ほかのお母さんはきっと裕福な専業主婦に違いない。母の時間的、経済的余裕はこんなところにも出る。 先月参加した「お父さんの懇親会」は、ひたすら気を遣って大変だったと悠人が言っていた。 社会的に地位の高いひとばかりで、年齢も35歳の悠人が一番若く見えたという。「仕事だって言って電車で日帰りにしたけど、みんなすごくお酒も強くて大変だったよ。高いワインバンバン開けるんだもの。もう来年は行かないよ~」などと言っていたが、この調子では行きたくても行けなくなりそう。名門小学校の交際費が、一般家庭の我が家に重くのしかかっていた。
母のお茶会
「こんにちは、梨々花ちゃんのお母さまですか? 亜理紗の母の絹香と申します。よかった、お出かけする前にお目にかかれて! 今日保護者会だからお会いできるかなって期待していたんです。このあと、遊びに行く4人でお茶でもいかが? ディズニーのまえに、ちゃんとご挨拶できて嬉しい」 授業参観と夏休み前の保護者会で、またしても1日有休を取った日、帰りがけにとっても素敵なお母さまたちに声をかけられた。エレガントな紺のワンピース。それでいて真夏なのにちっとも暑苦しくない。小ぶりなダイヤのアクセサリーが存在感を放っていた。 「あ、ありがとうございます、梨々花の母の衿子です。あの、この度はお誘いいただいてありがとうございます。梨々花とっても喜んでいます」 私はつい早口で頭を下げた。落ち着きがなく見えたかもしれない。 絹香さんと、その後ろでにこにこしているお母さんふたりは、きっとミカちゃんとユリナちゃんのお母さんだろう。優しそうで素敵な3人。私はどう思われているんだろう……。内心ひやひやしながら、学校をあとにする。
小説/佐野倫子 イラスト/Semo 編集/山本理沙
佐野 倫子