検証・鹿児島県警 ストーカー、盗撮…現職警官は警察情報を悪用した。軽い処分、透けるおごり…憤る被害側「信頼はゼロだ」
鹿児島県警が刷新を迫られている。現職警察官らの不祥事が相次ぎ、その後の対応も県民が納得できるものとは言えず、信頼を失った。野川明輝前本部長による隠蔽(いんぺい)疑惑まで浮上し、組織そのものに不信の目が向けられている。一連の不祥事は、メディア捜索の是非や公益通報の適否、公安委員会制度の課題などさまざまな論点も浮き彫りにした。県警の不祥事を通して考える連載企画「検証 鹿児島県警」の第1部は、県民感覚を欠いた実情を見つめ、組織像を問う。(連載「検証・鹿児島県警第1部~欠けた県民感覚①」より) 【写真】盗撮事件とストーカー事案について説明する野川明輝前本部長(左から3人目)=6月21日、鹿児島市の県警本部
昨年12月、枕崎署の元巡査部長による盗撮容疑が発覚した。霧島署に勤務していた2019年以降、県内の商業施設や運動施設などのトイレに侵入し、少なくとも80回、複数の女性を盗撮した。さらには、被害女性の住所を調べるため、県警の内部情報を不正に照会する悪質さだった。 元巡査部長は今年5月に逮捕され、県警が下した処分は停職3カ月だった。 被害女性の一人を知る県内の男性は「県警への信用はゼロだ」と怒りをあらわにする。情報を適切に扱うべき警察が立場を悪用した行為に、「被害者は一生の心の傷を負わされ痛ましい。絶対に許すことはできない」と非難した。 停職3カ月という処分にも納得していない。「組織のルールにのっとった形式的な手続きなのだろうが、あまりにも軽すぎる」 ■ □ ■ 県警が積極的に明らかにしなかった不祥事もある。 県内の駐在所に勤務していた30代男性巡査長が、市民の情報をまとめた「巡回連絡簿」を不正に使い、20代女性に携帯電話で性的なメッセージを送っていた。
県警は昨年12月に女性側から相談を受け、ストーカー規制法違反容疑で捜査を始めた。しかし「被害女性が事件化を望まない意向を示した」ことを理由に、今年2月に立件を見送った。 県警によると、巡査長は現在も在職している。南日本新聞の取材では、巡査長は駐在所から転出した。周辺の住民は「真面目で静かだった」などと語り、事情は詳しく知られていない。 巡査長は今年2月、本部長訓戒処分を受けた。県警は「訓戒処分は原則非公表」との基準を理由に、当初から発表しなかった。 表沙汰になったのは6月。情報漏えいの疑いで逮捕された前生活安全部長が「野川明輝本部長が不祥事を隠蔽しようとした」と“告発”したことがきっかけだった。 巡査長と面識があり、犯罪被害者支援に携わる40代女性も処分を知らなかった。「身内で注意を受けただけで甘すぎる。警察情報を悪用した大事件を発表しないという判断は間違っている」と苦言を呈した。
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