「お金をかけずに留学したい」 奨学金を獲得した学生が、応募書類に書き込んだ「計画」
円安や物価高で留学したくても金銭的理由で二の足を踏む学生も多いなか、給付型奨学金を獲得し、留学を実現させる学生もいます。官民支援プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN新・日本代表プログラム(以下、トビタテ)」でドイツに留学しました。どのように奨学金を獲得したのでしょうか。現在、アマゾンジャパン(東京都目黒区)で日本企業の海外進出を支援する菅野胡桃さんに、留学計画の立て方から現地での取り組み、就職活動までを聞きました。 【写真】国際見本市で日本文化をアピールする菅野さん
――2018年度に約11万5千人だった大学生の留学者数は、コロナ禍で激減しましたが、21年度には1万人ほどに回復しています。コロナ禍の直後に留学した菅野さんは、周りに留学経験者が少ないなか、何を学び、経験したいと考えたのですか。 筑波大学社会・国際学群の3年生だった21年10月から翌22年10月まで約1年間、ドイツのケルン大学に留学しました。留学で取り組んだテーマはヴィーガン(完全菜食主義)です。ヴィーガンとは、肉や魚、卵などの動物性食品を一切とらない人、またはその生活様式のことです。ヴィーガン先進国であるドイツでその文化を学び、日本人にとってヴィーガンをもっと身近なものにしたい、さらにはヨーロッパのヴィーガン市場に日本の植物性食材を普及させたいと考えました。 ――なぜヴィーガンに興味を持ったのですか。 私の場合は、高校生のときに「肉=太る」と捉えて肉を食べられなくなったことがきっかけです。 筑波大に進学して出会ったのが、ヴィーガンやベジタリアンのドイツ人留学生たちでした。健康や動物愛護のため、環境保全のためにヴィーガンになる人たちと接しているうちに、「日本ではなぜ菜食が広まらないのだろう」「豆腐などの日本の代替食品を海外でアピールできないか」と考えるようになりました。 ――ヴィーガンは海外だからこそ、追究できるテーマかもしれませんね。海外留学は金銭的負担が少なくありませんが、菅野さんはどうやって、奨学金を獲得したのでしょうか。 返済不要の奨学金にいくつか応募したなかでも、「トビタテ!留学JAPAN」は1年未満の海外留学に対して準備金25万円のほか、1カ月あたり16万円が支給される手厚いプログラムでした。給付型奨学金です。 留学計画書には、ヴィーガン大国のドイツで学びたいこと、日本の植物性食材を現地の市場に普及させたいことなどを、自分自身の話を織り交ぜて、2カ月かけてまとめました。さらに、英検のスコアや料理が得意なことも加え、渡航の半年前の2月に応募し、7月に奨学金給付が決まりました。 学先にケルン大学を選んだのは、筑波大学の協定校で安心だったのと、日本人駐在員が多いデュッセルドルフにも近く、日本の食材をアピールしやすいと考えたからです。