【舛添直言】これでいいのか、異様すぎる都知事選「候補者56人」「掲示板ビジネス」「学歴詐称疑惑」「AIゆりこ」…
(舛添 要一:国際政治学者) 6月20日(木)、都知事選が告示された。これまでの都知事選の常識、良識を破る異例、異常、異様な選挙である。日本社会全体の劣化を象徴しており、選挙後の東京の未来が気にかかる。 【写真】東京都知事選で、24人の立候補者を出した「NHKから国民を守る党」。そのポスター掲示スペースに貼られた女子キックボクサー「ぱんちゃん璃奈」のポスター。ポスターには「生活困窮者をなくせ!」と書いてあるが、ぱんちゃん璃奈が都知事選に立候補したわけではない ■ 50人を超える候補者 まずは候補者の数の多さである。56人に上る。候補者の数が多いと、「選択肢が増えるので良い」とか、「関心度の高さのバロメーターで評価する」とか、「誰でも立候補できるのが民主主義だ」とかいった積極的な評価もあるだろう。 300万円という供託金は立候補を制限するのに役立っていないことを証明しているとも言える。供託金は、売名を目的にしたり、面白半分に手を挙げたりする泡沫候補を極力減らすという目的があるが、今回はそうはなっていない。しかし、だからと言って供託金の額を増額すると、金銭的理由で、有為な人材が立候補しにくくなる。 候補者が増えた原因は、「NHKから国民を守る党(NHK党)」の掲示板作戦にもある。24人を立候補させたこの党は、候補者を大量に擁立して選挙ポスター掲示板を占有し、党に寄付した人に自由に自分の主張をポスターに掲載させるという。 具体的には、5月末日までは5000円、6月1~19日は1万円、20日以降は3万円を寄付すれば、1万4000カ所に設置してある掲示板のうち1カ所で、自分が自由に作ったポスターを最大24枚まで貼れるという。寄付が順調に伸びれば、供託金を支払ってもお釣りが出るくらいの収入となる。 このような「金儲け」的な掲示板の利用には批判の声が上がっているが、公選法にはこれを禁じる規定はない。しかし、このような行為は選挙という民主主義の土台を破壊するものである。公選法の改正が必要である。
掲示板には48人分しか確保されていない。そこで都選管は、届け出が49番目以降の候補者にはクリアファイルや画びょうを支給し、それを使って掲示板の端にポスターを掲示するよう要請している。その経費の財源も、私たちの税金である。 ■ 政党隠し いつからそうなったのか定かではないが、自治体の首長選挙では、候補者は「無所属」を標榜するのが通例となっている。そうしたほうが、無党派層の票をより多く獲得できるからだという理由からである。蓮舫も、立憲民主党を離党し、無所属候補となった。 2014年の都知事選に私は立候補し、当選した。国会議員の経歴を始めたときは自民党所属であったが、2009年夏に政権が民主党に移ったことを契機に、離党し、新党改革を立ち上げた。しかし、党勢拡大は難しく、2013年夏の参議院議員としての任期を全うした後、国会を去った。 その半年後、猪瀬都知事が辞任し、都知事選挙が行われることになった。各種世論調査で、次期都知事として私の名前を挙げる人が圧倒的に多く、自民党が私にアプローチしてきた。その結果、2014年1月に、自民党、公明党の推薦候補として、立候補することが決まった。私も、一般的な風潮に従って、新党改革を離党して、無所属で出馬することにしたのである。労働組合の連合も、私への支援を約束した。 その他に、共産党と社民党の支援を受けた宇都宮健児、小泉純一郎元総理が支援する細川護熙元総理、石原慎太郎元都知事が支援する田母神俊雄などが立候補した。 選挙期間中は、安倍首相や公明党の山口代表が、銀座などでの私の街頭演説会に駆けつけ、応援演説をした。つまり、無所属ではあっても、国政与党の自公代表として立候補していることは明らかであった。 結果は、舛添が約211万票、宇都宮が約98万票、細川が約96万票、田母神が約61万票であった。