【岸和田競輪・GⅠ高松宮記念杯】北井佑季GⅠ初制覇、落車しながらも郡司の思い胸にVゴール
岸和田競輪の令和6年能登半島地震復興支援競輪 大阪・関西万博協賛GⅠ「第75回高松宮記念杯」は16日、最終12Rで決勝を行い、終1半番手捲りを放った北井佑季(34)=神奈川・119期・S1=がゴール直前でバランスを崩しながらも先頭でゴールした。北井のビッグレースVは初。2着は北井後位を固めていた和田真久留、3着は終3角で4番手を確保し直線で突っ込んだ古性優作。北井は優勝賞金4790万円と、12月30日の静岡グランプリ出走権を手にした。6日間の総売上額は127億1252万3100円で、目標の120億円を大幅に上回った。 【賞金ランキング表 高松宮記念杯Vの北井佑季らトップ10に南関勢が5人】
■ヒーロー 傷だらけのチャンピンが誕生した。北井は「ゴール線を目がけてハンドルを投げて、『ガシャン』となった。よく分からなかった」。接触されてバンクに左側から落ち、しばらくは1角手前で倒れたまま。だが痛々しく起き上がると、「キタイー!」と叫び続けるファンのいるスタンドに一礼した。担架に乗り、医務室へと向かった。 左半身の痛みをこらえながらも、報道陣の前では感謝の言葉だけが出てきた。「師匠(高木隆弘)には、僕がピストに乗れない頃から、一から教えてもらった。タイトルを取ってほしいと心から思っていたのは師匠だと思う。応えられて安心した」。レースでも「準決では松井さん、決勝では郡司さんの熱い気持ちを感じた。同県の仲間の思いを感じながら、自分ができる精いっぱいの走りをした」。けん引役を買ってでた、〝年下の先輩〟たちの思いに応えてV。「お客さんからも、もり立ててもらった」と全方面に謝意を述べた。 FC町田ゼルビアや松本山雅FCなど、Jリーグで活躍した。「悔いのないサッカー人生を送った。だがサッカー選手としていられるのは長くない。やり切った。すべての情熱を競輪に注ぎ込むという思いでやっている」。転身し、デビューからわずか3年、猛特訓を重ねてタイトルホルダーとなった。「日々、苦しい生活ですけど、良かったです」と口にすると、タオルでそっと涙を拭った。 表彰式では、左下腿(かたい)に擦過傷を負った痛々しい姿で三笠宮家の彬子さまから優勝杯を受け取った。「ゴールで落車しましたが、これからも、泥くさい自分らしい走りで南関を引っ張っていきたい」。8月のGⅠオールスターはホームバンク平塚。今度はいつものように風を切り裂いて、南関の仲間と競輪ファンに、感謝を込めた激走を見せる。(野口雅洋) ◆北井佑季(きたい・ゆうき)1990年1月27日生まれの34歳。横浜市出身。近大中退。サッカーJリーグで9年間プレーした後、119期で養成所に入所し、在校成績は55位、卒業記念レースは⑤⑨⑧❹。2021年5月、神奈川支部でデビュー(静岡③⑥①)。22年5月、A級2班で3場所連続完全優勝を果たしS級に特別昇級。通算成績は295走で153勝、優勝25回。ビッグレース制覇は24年6月の岸和田GⅠ高松宮記念杯。通算取得賞金は1億7540万2100円。師匠は高木隆弘。ホームバンクは平塚。169センチ、78キロ、O型。