ドイツで試行錯誤を続ける佐野海舟の現在地 鹿島から飛び込んだ“甘くない”ブンデスでの日々「まだまだ自分の力が足らない」
「課題は出ている。けどチームとして確実に積み上げてきているものはある」
ただ、反省する中で、掴んだ手応えもある。実は1点を追っていた27分に生まれたマインツの同点ゴールは、佐野の飛び出しが起点となったものだった。 対戦相手ごとにタスクは変わってくるが、攻撃への積極的な関与、そしてセカンドボールの回収と球際の鋭さは常に求められるポイントだ。ゆえに本人はこう語る。 「1点目の時みたいに2列目からどんどん飛び出していくこともやっていけば得点につながるのかなと思います。そうしたプレーを増やしていきながら、でも中盤のスペースをあけないことを意識しながら、バランスを持ってやっていきたいです」 マインツは基本的に中盤センターに君臨する元ドイツ代表MFのナディム・アミリが司令塔として君臨している。チームメイトはとにかく彼を探し、ボールを預けるところから攻撃がスタートさせるケースが多い。 類まれなゲームメイクセンスを持つアミリを経由すれば攻撃にリズムが生まれ、チャンスへつながるという点は大きな武器である一方で、相手チームの警戒はアミリに集中する。となれば、必然的に技巧派MFを経由しない形でチャンスを作る攻撃パターンの創出が必要となってくるだろう。 佐野も新たな攻撃パターン創出への関わりの必要性を認めていた。 「そうですね。無理につけても(味方FWが)孤立している部分もあったと思うので、バランスを見ながら、前に行けるのか、横に広げるのか。でもゴールにつながるパスというのは出していかないとなとは思います」 うまく試合に絡めていないとプレーに焦りが出てくることもある。そのなかで、確かな積み重ねを感じられているかは大事なポイントになる。佐野はその点を次のように肯定していた。 「課題は出ている。けどチームとして確実に積み上げてきているものはあると思います。こういう結果をチーム全体で受け止めてやるしかないと思います」 マインツはブレーメン戦以降で、アウグスブルク戦(4節)は退場者を出しながら3-2と辛勝、ザンクトパウリ戦(6節)では3‐0と快勝。6節終了時でマインツは2勝2分2敗の10位。昨シーズン同時期は1分5敗と未勝利で最下位にいたことを考えると満足のいく位置につけている。 そんないまだ発展途上にあるチームで成長を続ける佐野。鹿島からドイツに渡ったサムライは真摯に、そして謙虚に戦い続けていく。 [取材・文: 中野吉之伴 Text by Kichinosuke Nakano]