高校で全国3冠→学生陸上界からドロップアウト…“元・天才少女”石塚晴子(27歳)が若い選手に伝えたいこと「自分のゴールをどこに置くかが大事」
インターハイ3冠を達成し、女子400mHでU20日本記録を持つ石塚晴子。東大阪大敬愛高時代にその名を全国に広め、高校生ながら世界選手権4×400mリレーの代表にも選出された。若手ロングスプリンターとして将来を期待された彼女だが、「インターハイ優勝」という輝かしい目標を達成した後、その先に続くものを思い描けずにいたという。引退後の今だから思う“ゴール設定の大切さ”とは――。《NumberWebインタビュー全3回の3回目/最初から読む》 【写真】「えっ、何頭身なの…?」18歳の石塚晴子選手の長~い手足とバキバキの腹筋&企業で採用担当も務める27歳現在のOL姿…高校時代「5冠」を目指したインターハイでの激走シーンもあわせて見る(30枚超) 2019年秋、石塚がTwitter(現X)に投稿した自作の漫画が話題を呼んだ。 タイトルは「10年続けて仕事にもなった陸上を辞めてOLになろうとした話」。漫画は、陸上選手であることを話すと、周囲から言われる「じゃあオリンピックを目指しているんですね」という声への戸惑いから始まる。 大学に進学した石塚は、自身の置かれた環境に違和感を抱き、1年の冬に休学したのち退学。その後、ローソンに所属して時短勤務で競技を続けたものの、練習内容や体重管理など悩みは尽きなかった。
心の中にある「目標・動機の箱」を整理してみると?
なかなか結果が残せず、東京五輪の予定が翌年に差し迫る2019年、「オリンピックを目指す」という目標の動機について改めて考えた。 「シンプルな動機って何?」「私を突き動かしているものは?」 心の中にある“目標・動機の箱”を整理していくと……そこには何も無かったのだという。「結果を出したい」というモチベーションの一方で、「自分はどうなりたいのか」という軸がはっきりしていなかったのだ。 そうして、石塚は陸上を始めてから10年間で初めて「休養」という選択を取ることになる――という実話をもとにしたエピソードだ。 振り返れば、この“箱”の中には「インターハイ優勝」という強い目標が入っていた時期もあった。高校2年時に400m3位、400mHと800mで2位、4×400mリレーを優勝して敬愛の総合優勝に貢献。そして翌年、400mを高校歴代4位の53秒30、400mHを高校新の57秒09で制し、4×400mリレーと合わせて3冠を果たした。 この年の女子MVPに選ばれ、最大の目標を最高の形で叶えた石塚。すると、世間は「未来の日本代表」として将来を期待するようになる。しかし、長年の目標を達成した彼女は、そこから先に続くものを具体的に思い描けなかったという。 「私はインターハイで優勝したいという気持ちだけで入学したので、その先のことはあまり考えていなかった。現役後半は口に出していましたが、あまりオリンピックに興味がなくて……(笑)。でも、取材では『これから世界選手権やオリンピックがあるけれどどう思うか』という質問を受ける機会がすごく増えて。メディアの質問や見出しから、自分に期待されている役割を感じていたのかもしれません」
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