「悪い子はいねがー」三陸鉄道こたつ列車、観光客を乗せて快走
「悪い子はいねがー」。東日本大震災からの復旧を軌道に乗せつつある第三セクター、三陸鉄道(本社・岩手県宮古市)で、冬季限定の「こたつ列車」が快走しています。秋田のなまはげと似た鬼の「なもみ」が車内を練り歩き、乗客に大うけ。沿線復興の願いも込めて走る名物列車を、関東圏からの日帰りで訪れてみました。 【写真】三陸鉄道が全線復旧 被災地の思い背負い「再出発」
「なもみ」に「あまちゃん」登場
2006年から続くこたつ列車は今冬、全線運行再開後初の運行。昨年12月から今年3月まで、土・日曜日と祝日に久慈発12時15分~宮古着13時54分、宮古発15時05分~久慈着16時45分の2本走ります。久慈―宮古間の片道運賃は1850円で、こたつ列車の指定席は310円。こたつを12席設けた専用列車1両と一般自由席車両の2両編成が基本です。指定席の予約は1か月前からで、車内で楽しむウニ、アワビなどの海鮮弁当の予約もできます。こたつ列車の乗客には乗車証明書などのプレゼントも。
1月31日朝にJR東日本大宮駅を東北新幹線で出発。盛岡経由で宮古から乗車したこたつ列車は、県外客らでほぼ満席でした。朝ドラ「あまちゃん」の格好をした女性スタッフが宮古~久慈間の震災の被害状況などを通過地点ごとに写真で丁寧に説明して回ります。高台への町の移転を進める大規模な工事などを車窓から見た乗客は、何度もうなずきながら震災の傷跡の大きさを感じ取っていました。 途中で2人のスタッフが扮した岩手県北部の風習「なもみ」が車内に登場。ボール紙製の大きな包丁を手に髪を振り乱して「怠け者はいねが~」「悪い子はいねがー」とこたつの間を練り歩き、缶ビールでほろ酔いのグループ客らは大喜び。なもみの面を借りてかぶったり、並んで写真を撮るなど楽しんでいました。長野県山ノ内町から来た小松陸宜(むつのぶ)さん(85)は「横浜に住む娘と来ました。東北旅行は4回目。いいところですね」と話していました。
復興による沿線の乗客増が理想だが
三陸鉄道は宮古~久慈間の北リアス線と盛~釜石間の南リアス線に分かれており、両区間の間を結ぶ釜石~宮古間はJR山田線が運行するサンドイッチ型の路線。2011年3月11日の東日本大震災で全線が運休し、南・北リアス線の路盤流失などの被害は300か所を超えました。国鉄再建法による赤字ローカル線の整理、再編成で三陸沿岸の路線を引き受けて1984(昭和59)年に第三セクターとしてスタートし、厳しい経営が続いていただけに震災でさらに大きな打撃を受けました。 2014年4月に線路は復旧しましたが、南・北リアス線に挟まれた形のJR山田線宮古~釜石間の扱いが焦点になり、この区間を三陸鉄道に移管する動きになっています。これにより北端の久慈駅から南端の盛駅まで三陸鉄道として一貫して運行することになります。経営への影響について三陸鉄道の冨手淳・旅客サービス部長は「メリットとしては、これまで南北2カ所に設けてあった指令センターを1か所にまとめて集中管理できること。一方でデメリットは宮古~釜石間の山田線の区間に踏切が50か所もあり、その管理などが大きい」と言います。現在の三陸鉄道の南・北リアス線は建設時に立体交差の方針で臨み、踏切は南北合わせて3か所にとどまります。