欧州の銀行はCO2排出量の多い企業への融資に高利率を課している
本研究における3つの問い
研究における第一の問いは、「銀行の利率は、顧客企業の気候リスクを反映しているのか、しているとすればどの程度か」だった。結果として、「ユーロ圏の銀行は、CO2排出量の多い企業に高い利率を課し、グリーン転換にコミットしている企業には利率を下げて優遇していた。これは、企業の信用リスクを示すデフォルト確率を統計的に統制した場合でも同様だった」 第二の問いは、「脱炭素化に取り組む銀行は、顧客企業の気候リスクに対して、より高い値付けをしているのか」だった。研究では、SBTiへの署名を、気候リスク軽減に対する銀行のコミットメントの指標とした。結果として、「銀行は、気候リスク・プライシングに関して、公約を履行しているようだ。SBTiの宣言に署名している銀行は、脱炭素化にコミットする企業に対して低金利融資を提供し、また程度は劣るものの、排出量の多い企業に不利な条件を課していた」 最後に、研究では、ECBの政策が気候融資に与える影響を検討した。具体的には、「金融政策ショックは、銀行の気候リスク・プライシングに影響を与えているのか、与えているとしたらどういった形か」というものだった。分析の結果、「ECBの金融政策は、企業への融資に、信用リスク志向だけでなく、気候リスク志向というチャネルを通じても影響を与えていた。緊縮的金融ショックは、銀行に信用リスク割増金および炭素排出割増金を引き上げるよう促し、低排出企業よりも、高排出企業への融資を抑制するように作用した」 同研究は、次のように結論づけている。「この結果は、ユーロ圏の銀行が、2023年7月に実施された調査で自ら報告した情報と極めて正確に一致している。この調査では、銀行、とりわけ脱炭素化にコミットしている銀行は、顧客企業の環境影響に応じて、取引条件や期間、信用基準などに差をつけていることがわかった」 この研究から、気候変動と気候リスクへの認識がEUの銀行業界に浸透しており、温室効果ガス排出削減にコミットする企業が優遇されていることが明らかになった。また、持続可能性、ESG、その他の気候関連の報告書が、事業を活性化させるためのツールになり得ることも示唆された。
Jon McGowan