生成AIの「プロンプト集」が不要である理由 (横須賀輝尚 経営コンサルタント)
『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック(横須賀輝尚 著)』
急激な進化を続けるAIをどのように業務へ取り込むか?これは多くの企業やビジネスパーソンにとっての課題です。 「生成AIの活用というと、プロンプト(指示)の作成に焦点が置かれがちです。しかし、そもそも複雑なプロンプトは不要です。」こう話すのは、経営コンサルタントで士業(特定行政書士)でもある横須賀輝尚氏。 2023年に生成AIが登場したときから、活用方法を研究し続けてきました。生成AIとの新たな付き合い方とはどのようなものなのでしょうか? 『「ムダ仕事」も「悩む時間」もゼロにする GPTsライフハック』(技術評論社)より、一部抜粋・編集しお伝えします。
■プロンプトが難しくて覚えられない?
生成AIが流行りはじめてからというもの、マスコミやメディア、コンサルタントは「プロンプト」に注目し始めました。プロンプトとは、AIに対して人間が入力する、指示のための文章のことを言います。「こんなプロンプトを入れれば、出力がうまくいく」「このプロンプトを使うのが有効」などと、プロンプトを重視する傾向が強く表れました。 さらに、生成AIコンサルタント的な肩書きを名乗る人が増えました。X(旧Twitter)などのSNSで「生成AIコンサルタント」と名乗るだけでフォロワーが増える。そのくらい生成AIはブームを起こしたのですが、こうした生成AIコンサルタントがよく行っているのが、「プロンプト集の配布」。「いいねとリポストでプロンプト集差し上げます」「LINE友だち登録で、プロンプト集あげます」などと言って、プロンプト集を配布しているのを見かけたことがあるかもしれません。 たしかに、プロンプト次第で出力される結果が違うわけですから、プロンプトは重要です。でも、プロンプトの雛形を集めることやその雛形を埋めることは重要ではありません。理由は大きく分けて3つあります。
■プロンプトはシンプルなほうがよい
ひとつは、プロンプトは一生懸命に作りこんだり、一度に大量項目を入れるべきものではないということ。世間で配布されているプロンプト集のほとんどは「長文で作り込まれたプロンプト」で、いくつもあなたが埋めなければならない空白があったりします。しかし、生成AIの本質を踏まえると、プロンプトはシンプルにするほうがよいのです。 たとえば原稿を執筆してもらうのに、テーマ、ボリューム、テイストなど50項目に渡るプロンプトを一度に入れたとします。50個も指定をすれば、一度ですばらしい出力結果を出してくれるように見えますが、実際のところ生成AIに50項目も入れてしまうと、生成AIは出力の優先順位について混乱してしまうのです。 人間で例えてみましょう。あなたが優秀なビジネスパーソンだったと仮定します。そして、受発注確認の仕事を上司から依頼されました。この仕事のやり方が、厳密に指定されていたとします。雛形を使ったメール文をお客様に出す。納期の◯月◯日の◯時◯分に間に合うか、◯◯部署の◯◯氏に架電し、配送の確認を取る。納品書が滞りなく準備できているかも、また別部署に確認する。メモの形式にも雛形がある。お客様へのアフターフォローまでも仕事に含められていて、そのメール文にも雛形がある。 こんなに指示があったら、あなたもなにからどう手を付ければいいか、混乱しますよね? むしろ「受発注確認の件、うまくやっといてね」とざっくり言われたほうが、仕事をスムーズに終えられるでしょう。 生成AIと人間は同じものではありませんが、「指示は簡潔にしたほうがいい」という点では同じ。複雑な指示をもらったら、うまくできないのです。また、多数のプロンプトを入れることによって、各項目の出力量も少なくなってしまいます。そのため、30も40もの指示をすれば、それぞれの回答出力がひと言ずつしかない、ということもありえるのです。