【中学受験の塾選びの新しい動き】息子の開成合格を目指すバリキャリママ 選んだのはSAPIXよりもっと少数精鋭の超エリート塾
中学受験の対策をする塾のスタートは小学3年の2月で、そのため前年の11月から入塾テストがおこなわれる。特に難関校を目指す子の家庭にとって、難関校対策の塾選びは重要な要素となってくる。そしてその様相は近年、母親の働き方の変化もあって、変わってきているようだ。『中学受験 やってはいけない塾選び』が話題のノンフィクションライター・杉浦由美子氏がレポートする「変わりゆく中学受験の塾選び」。【全4回の第1回】
* * * 中学受験塾の入塾は一般的に小学3年生の2月からだ。そのため11月から1月は入塾テストを受ける時期で、塾選びの季節でもある。 小学校生活の後半の3年間、子どもが通いつ付ける場所なのだから適切に選びたいところだが、これがわりと難しい。 取材をしていて、私が「なるほど」と思ったのは、ある個別指導塾の幹部の言葉だ。 「難関校対策を優先するか、学童代わりを求めるのか。中学受験に対する家庭の方針を最初にそれを決めてから塾を選ぶべきです」 中学受験の家庭の方針は大きく分けて2種類ある。 「なにがなんでも難関校に入れる」というガチ受験組と、「学童代わりに塾に通わせて、子どもの性格に合う学校に入れる」というマッチング受験組だ。それに沿って塾を選ぶ必要があるというわけだ。一方、大手塾は難関校対策に長けた塾と面倒見のいい塾に分かれる。 さて、中学受験生の家庭の層は大きく変貌してきている。数年前までは高収入男性と専業主婦が「なにがなんでも御三家」というガチ受験の方針で、平均的な収入の男性と働く妻の共働き家庭が「学童代わり」という方針が多かった。 今の保護者たちの中で難関校出身者たちに「中学受験の塾はどこに通ってたんですか?」と聞くと、四谷大塚と答える人は少なくない。四谷大塚のテキストは「予習シリーズ」というが、最近、SNSで「予習シリーズって子どもが予習するんじゃなくてママがするっていう意味らしいよ」という投稿を見た。大げさな表現だが、実際、授業前の予習が必須である四谷大塚のメソッドでは、母親が勉強をしなければならないことも多かった。 ひとりでテキストを読んで予習ができる能力がある子どもはそうはいない。大半の家庭では母親が横について、予習をさせる必要があった。そのためには母親が学習の内容を分かってないといけない。 今は予習ナビという動画教材が配信されているから、それを見て子どもは予習をするので、四谷大塚は母親の負担が軽くなっている。 一方で、今、ガチ受験生が通う塾であるSAPIXやグノーブルに予習の必要はない。授業では導入、つまり「とっかかり」しかやらない。そのため、生徒は解けるところまで仕上がってない状態で帰宅をするから、ひとりで宿題ができないケースもある。そうなると、母親が教えてあげる必要がでてくる。かつての四谷大塚では予習への付きそいが母親の役割だったが、いま人気を集めているSAPIXやグノーブルでは、復習(宿題)の付きそいが母親の役割になりがちだ。 世が変わっても、ガチ受験の塾は母親が頑張らなくてはならないシステムなのだ。コロナ前ぐらいまでは東京には高学歴な専業主婦が多くいて、彼女たちにとっては子どもの受験が自己実現だった。ゆえにどんな犠牲もいとわなかった。そして四谷大塚もSAPIXも高い合格実績をあげていった。