意外と知らない「パトカー」のヒミツ…赤色灯が“横長”になったのは超有名「映画評論家」の提案だった?
横長赤色灯の導入を巡って…
その人物とは、映画評論家の水野晴郎氏(1931~2008)。実は水野氏は警察研究家として、10冊以上の書籍を残している。その中の一つ『世界の警察』(警察時報社 1985年刊)によると、同氏が警察の組織・機構に興味を持ったのは昭和46年。テレビ番組の取材で警視庁第2交通機動隊を体験取材したことがきっかけだった。〈私の人生を変えることになる勤務体験の第1回であった〉(同書)が、それ以来、アメリカを中心に世界各国の警察をただ取材するのではなく、実際に勤務を体験して観察、比較するポリスサイエンティストとしての活動に加え、アメリカ各地の警察で予備役サージェントとして任命を受けるほどだったという。 実際、警察庁や警視庁の上層部に知己も多く、前掲書の中では漆間巌・警察大学校教授(後に警察庁長官)や、桜井勝・警視庁公安総務課長(後に警視庁公安部長)、渡辺泉郎・防衛庁陸幕調査部(後に神奈川県警本部長)ら、そうそうたる幹部と対談している。 こうした経緯から、ネット上では「日本警察のパトカーの赤色灯が横長タイプになったのは、アメリカはじめ世界の警察制度に精通していた水野氏が、旧知の警察庁や警視庁の幹部に進言したところ採用された」という情報がいくつも見られ、半ば定説となっている。一方で、横長タイプの導入には、円柱タイプに比べて、視覚障害者が識別しやすいからという側面もあったというが、警察庁に聞くと、 「横長タイプの赤色灯の導入経緯等を記録した文書等が保存されていないため、水野氏による警察庁等への提案や視覚障害を有する方への配慮の有無等は不明です」 とのことだった。
デイリー新潮編集部
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