日本にいる「国連軍」を知っていますか? 在日米軍だけでない安全保障の最前線 川名晋史・東工大教授に聞く
●国連軍基地から見えてくるものがある
――たしかにお話を伺っていると「在日国連軍基地」というタイトルでも良い気がします。朝鮮国連軍は朝鮮戦争勃発に伴い創設されたもので、休戦協定後は日本に国連軍後方司令部が設立され、現在も横田飛行場に置かれています。司令官の他、オーストラリアやイギリス、フィリピン、タイなど9カ国の駐在武官が連絡将校として大使館に常駐している。このことはあまり知られていません。 この本は在日米軍基地を表と裏から両面を見るというコンセプトなんです。 在日米軍基地のことを書きながら、国連軍基地としての側面がある。その両面を描きたかったんですね。 現在、国連軍は日本にある7カ所の在日米軍施設・区域を使用することができます。これらを使うことができるのは、国連軍地域協定を締約した11カ国です。最近はイギリスやフランスの艦船が日本に来航することも増えています。これらは北朝鮮に対する制裁の実効性確保のためですが、こうしたことでも国連軍基地としての役割に注目が集まっています。 ――本書では、在日米軍基地と国連軍基地の議論がパラレルになっていますね。 2000年代の議論については、辺野古移設の話はありますが、一旦そこでストップしている。これは日本を取り巻く安全保障環境ともパラレルになってますね。 1990年代は冷戦が終わったことで日米同盟漂流も指摘されている。一方、2000年代は中国が台頭したことで、日米の防衛協力が一気に進みましたが、在日米軍基地の問題は固定化されてしまっている気がします。 私が問題だと思っているのは基地の実態というよりも、論争の仕方が変わってきたことですね。 ――論争の仕方が変わってきた? 沖縄vs本土の二項対立に陥ってしまって、どうしてもそこから抜け出せなくなってしまっていると考えています。 よく「本土の人の責任」という言い方がされますが、責任の取り方は基地を引き取るというだけではないと私は思っています。なぜ今このような現状になっているのかを説明することも責任ではないでしょうか。国連軍と国連軍地位協定というフレームがないとなぜ沖縄に基地があり、基地が動かないのかということを説明できない。こうした構造を説明するということも一つの責任だと思ってます。 ――私も日本の外交・安全保障政策を専門にしてますが、凄く難解になってしまっていると実感します。実務家でも良く分かってないこともある。 日本の外交・安全保障政策の場合、屋上屋というか、無理に無理を重ねて、戦後の法体系が作られている。その過程で全体像が見えにくくなってしまった。政治家にも理解している人はいないでしょうし、外務省や防衛省でも分からない。アメリカもたぶん分かってないだろうということもあると思います。