金銀増産支えた「佐渡島のラピュタ」 新潟「北沢浮遊選鉱場」 探訪
赤く染まった空が朽ちた巨大な建物を包む。風化した基礎に茂るコケやツタが夕日に照らされ、みどり色を輝かせていた。 【地図でみる】北沢浮遊選鉱場跡 新潟・佐渡島にある「北沢浮遊選鉱場」。 古代遺跡をほうふつさせる姿だが、昭和以降の佐渡の金の採掘を支えた施設群だ。今年7月、江戸時代に独自の採鉱、精錬技術で金銀の産出を発展させた「佐渡島の金山」が世界文化遺産に登録された。北沢浮遊選鉱場は構成資産から外れたが、佐渡の昭和初期のゴールドラッシュを支えた拠点だった。 金山で採掘された鉱石を細かく砕き、水を使った浮遊選鉱法によって金銀などを抽出していた。銅の製造過程で使われてきた技法を、日本で初めて金銀へ応用することに成功したという。戦時下だった昭和12年に大規模な設備投資が行われ「東洋一の浮遊選鉱場」ともうたわれた。27年、鉱山縮小に伴い廃場となった。 現在はコンクリートの基礎部分のみが残り、「佐渡島のラピュタ」と呼ばれ観光スポットとなっている。 世界遺産登録を受けて、島に国内外から注目が集まっている。しかし、風雨にさらされた鉄筋コンクリートは劣化が激しく保存が課題だ。「軍艦島(長崎市)や原爆ドーム(広島市)など他の遺跡管理者と意見を交換して保存方法を模索している」と、佐渡市世界遺産推進課の宇佐美亮課長補佐(49)は語る。 選鉱場の敷地内でレストラン「北沢Terrace」を営む浦島観光の間島万起人さん(32)は、「世界遺産登録をきっかけに、多くの人に訪れていただいている。佐渡の伝統や文化を発信していきたい」と話している。 (写真報道局 松井英幸)