キック世界3冠KO奪取の那須川天心が見せた井上尚弥との共通点とは?
総合格闘技イベントの「RIZIN.16」が2日、神戸ワールド記念ホールで行われ、メインで那須川天心(20、TARGET/Cygames)がISKA世界フェザー級タイトル(ユニファイドルール・57キロ)をかけて、同フリースタイル世界バンタム級王者のマーティン・ブランコ(30、アルゼンチン)と対戦、2ラウンドに3度のダウンを奪い2分19秒にKO勝利した。ステップバックを駆使して距離を作らせず相手の情報を処理してからKOにつなげる戦略は、競技こそ違えど「刺激を受けた」と天心がリスペクトするボクシングのWBA、IBF世界バンタム級王者、井上尚弥(26、大橋)との共通点。関西初登場で神戸のファンにインパクトを与え、RISEバンタム級、ISKAオリエンタルルール世界バンタム級王者に続く世界3冠を獲得した天心は「世界へ飛び出したい」と訴えた。 「バチッ」 肉体が破壊される不気味な音が響く。 2ラウンド、天心の左のミドルキックがブランコの脇腹をえぐると、アルゼンチン人は腹を抱えマットに寝ころび悶絶した。もう天心は勝利を確信していた。 「たぶん、あれは誰でも倒れると思う。いい音が鳴った。これで終わったかな」 生中継したフジテレビのCM中に決まったミドルキックには綿密な仕掛けがあった。先に左のオーバーハンドフックを打ち込み、ガードを上げさせてボディをガラ空きにしておいた。 「大きい(パンチの)振りを入れたらミドルが入るかなと思った」 計算ずくのコンビネーションで揺さぶられたらたまったものじゃない。 それでも立ち上がってきたブランコに、天心は、一発大技を狙ったが、相手も飛び上がったため、冷静にひとつ間をおいてから、なんと両足を揃えて顔面に滞空時間じゅうぶんのドロップキックを見舞ったのだ。 天心の関西初上陸でチケットが売れ、増席に次ぐ増席で、8107人にまで膨れ上がった神戸の“格闘技殿堂”のボルテージは最高潮となった。もちろんキックにはないプロレス技。 「ちょっと盛り上げるためにやりました」 心憎いエンターテイナーである。 さらに至近距離のワンツーを見せておいて左膝をボディへ。2度目のダウン。レフェリーは試合を再開させたが、天心はフィニッシュに向けて突進した。パンチからローを絡めて最後は頭をつかんで左膝をガツンとまたボディへめり込ませた。3度目のダウンを喫したブランコは、もう戦意喪失。レフェリーがKOを宣言すると、天心は器用にコーナーポストの上によじ登って雄叫びを上げた。 「勝ててホッとしている。今振り返って、できたこと、できなかったことを考えるとき、今回は体重調整を考え動きにキレは出てきた。蹴りは走っていた。でもパンチは緩いかな。ただ、強さを見せられたと思う。周りと全然違うな、という点を見せられればと思っていたので、その辺は凄く良かった」 綺麗な顔で会見場に現れた天心はまるで解説者のように試合を総括した。