有馬記念に起きた誤算…なぜ大本命アーモンドアイが9着に沈み2番人気のリスグラシューが勝ったのか?
レース前から大本命のアーモンドアイに不安がなかったわけではなかった。久々の右回り。そこへもってきて今回は初めての中山コース。スタート直後を含め、コーナーが6回あるトリッキーな2500メートル戦は、レースの流れ次第ではスタミナや底力も要求される。ましてや、トップホースが集結する頂上決戦。今年は実に11頭のG1馬が参戦しており、ポジション争いを含め、レース中のプレッシャーも強く、決して簡単な展開のレースにはならないとみられていた。それでも1番人気に支持された理由に、今年も猛威を振るうノーザンファームの生産馬という点もあったのかもしれない。 ディープインパクト(05年2着、06年1着)をはじめ、ブエナビスタ(09年、10年ともに2着)、サトノダイヤモンド(16年1着)、レイデオロ(18年2着)など有馬記念で1番人気に支持されたノーザンファーム生産馬は信頼度抜群。「シルク」「国枝」のブランド力も人気を後押しした。今回のアーモンドアイは、発熱(微熱)明けだったとはいえ、体調管理や調教技術の向上により、そんな不安も吹き飛ばしてくれると、多くの競馬ファンは結論づけたのではないか。だが、競馬は生き物。どんな誤算が起きるかわからないのだ。 対照的だったのが勝ったリスグラシューだ。間にヴェロックスを挟んで、アーモンドアイを少し前にみる位置取り。3枠6番という好枠を生かし切り、内で脚をためた。 殊勲のダミアン・レーン騎手は「ペースが速いと感じていたので、ポジションにこだわるよりもリズム良く走れることを重視した。4コーナーの手応えも抜群。反応も素晴らしかった」と振り返った。 折り合いをつけ、インで脚をためると直線は外へ出して一気に差し切った。衝撃の5馬身差。これぞ、成長力に富んだ父ハーツクライの血の威力か。 矢作芳人調教師は「5歳の暮れにしてさらに進化していると感じていましたが、自分の目に間違いはなかった」と目尻を下げた。これでJRA賞の年度代表馬も確定的となり「やはり格別。一生に一度は取ってみたい。リスグラシューにはありがとうの言葉以外にありません。史上稀に見る名牝だと思います」と愛馬をたたえた。 最終調整では、坂路でハードな併せ馬を消化した。800メートル51秒3、ラスト200メートル12秒3という究極の仕上げを施したことも大団円につながったのかもしれない。