「検査中に分泌物が…」中京テレビ看板アナ、カメラを手術室に入れて“伝える”を決意した乳がん闘病
次々と想定外の出来事が起こっても、恩田さんが治療に向き合うモチベーションになったのは、「仕事に復帰する」という目標だったという。
がんだからといって仕事は辞めないで
「必ず番組に復帰する!という気持ちが強かったので、焦りはありませんでしたね。それよりも、番組で後輩が頑張っている姿は頼もしく、私も頑張ろうと励まされました。この対応はいいなと思えることもあったりして、すごく勉強になりましたね」 再手術を乗り越え、抗がん剤の副作用も落ち着いてきたころ、ショートスタイルのウィッグ姿で『キャッチ!』の生放送に。最初の乳がんの手術から、実に4か月ぶりの本格復帰となった。恩田さんの治療に密着してきたドキュメンタリー番組も放送され、大きな反響を呼んだ。 多くの励ましや共感が寄せられた中で、恩田さんがいちばんうれしかったのは、「番組を見て検診を受けた」という声が多かったこと。 「2人に1人ががんになるといいます。治療のスタートが早いほど治療の負担も軽減されますから、定期的に検診を受けることが第一。がんだったら怖いからと避けるのではなく、安心するために受けてください。異変を感じたらすぐに受診することも大事ですね」 現在、恩田さんは再発予防のためのホルモン療法を、術後10年間続ける予定で継続中。また、がんに関する情報発信にも力を入れている。“がんになっても仕事を諦めないことの大切さを知ってほしい”と強調する。 「今や“がん=死”という時代ではありません。一方で治療の長期化による治療費の問題もあります。つまり、がんになっても仕事を続けることが、何より大切な時代になっているのです」 ただし、病状も薬の副作用も、職場の環境も人によって千差万別。がんに対する理解が十分ではない職場がいまだに多いという現実もある。 「私の知人も、がんになって退職を促されたと落ち込んでいましたが、早まらないでと励ましたことがあります。その後、会社と話し合って仕事を続けられることになったと聞き、ほっとしました。がんになると弱気になりがちですが、仕事についてはぜひ強気で! そして、職場と患者双方で、できること、できないことをよくすり合わせて、無理なく働き続けられる道を探すことが大切だと思います」 恩田千佐子さん●1967年、東京都生まれ。中京テレビ放送アナウンサー。夕方の報道・情報番組『キャッチ!』のキャスターなど“局の顔”として活躍。2017年、乳がんの手術を受け、治療継続中。所属の中京テレビでは、乳がんの知っておくべき知識や、セルフチェック方法などを発信している。 取材・文/志賀桂子