70年研究・採集のトンボ標本72種 枝重夫さんが長野県松本市に寄贈へ
70年にわたってトンボの採集や研究にまい進してきた、日本トンボ学会名誉会長で松本歯科大学名誉教授の枝重夫さん(92)=長野県松本市沢村3=が近く、自身が手掛けた松本平のトンボの標本を市に寄贈する。松本、安曇野、塩尻、大町の松本平4市で確認できるトンボをほぼ網羅しており、長野県版レッドリストに掲載された絶滅危惧種や準絶滅危惧種も多数含む。郷土の記録や後進の教材に―。長年の情熱の結晶が活用されるよう願っている。 寄贈するのはオニヤンマやオオヤマトンボなどの大型のトンボから、ハッチョウトンボといった小型まで計72種の標本。「松本市周辺のトンボたち」の標題が添えられる。松本平の4市で確認できるトンボは約80種とされており、ほぼ網羅した内容だ。枝さん自身が県内で採集したりかえしたりしたといい、成虫に羽化殻をセットにした標本も多い。 県版レッドリストに掲載される種は、絶滅危惧Ⅱ類のアオサナエやオジロサナエ、カトリヤンマ、準絶滅危惧のオゼイトトンボやアオハダトンボなど10種余。生きた化石と称され、市内では平成20(2008)年7月に枝さんらによって初めて採集されたムカシトンボの標本も含まれる。 茨城県出身。トンボの研究に本格的にはまったのは大学1年生のころといい、これまでに採集した日本産のトンボは百数十種類に上る。「うわっと大きいのが捕れるとうれしいものだよ」。捕虫網を動かす手ぶりをしながら往時を懐かしむ。 生涯をかけて打ち込んだトンボ研究の膨大な資料や文献、その他の標本も、専門性の高い県外の博物館への寄贈を予定する。「自然破壊でトンボは減ってしまった。でも昔はこんなにいたんだよということを知ってもらいたい」と話している。
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