今朝丸裕喜だけじゃない! なぜ「報徳学園」はプロ注目の好投手を次々と生み出せるのか
2年連続で選抜準優勝を果たした報徳学園(兵庫)。夏の甲子園でも優勝候補の一角と見られていたが、初戦で大社(島根)に1対3で競り負け、早々に大会を去った。1回に2点を先制されると、大社のエース馬庭優太(3年)の前に打線は沈黙。最終回に追い上げを見せたものの、最後は走塁のミスもあって、追いつくことはできなかった。【西尾典文/野球ライター】 【写真を見る】「小芝風花」16歳当時の笑顔が初々しすぎる 歴代「センバツ応援イメージキャラクター」の爽やかな笑顔 ***
「次はプロで勝てる投手になりたい」
ただ、そんなチームにあって、プロのスカウト陣から特に高い注目を集めていた投手が、エースの今朝丸裕喜(3年)だ。188cmの長身で150キロに迫るスピードと高い制球力が武器で、高校ナンバーワン投手の呼び声も高い。大社戦では味方の守備のミスなどもあり、6回2/3を投げて3失点(自責点2)だったが、2回から6回まではほぼ完璧な投球だった。 「試合には敗れましたが、投球内容は悪くなかったです。(高身長の投手は瀬コントロールが悪いことが多いが)あれだけの身長があっても、制球力があるところがいいですよね。立ち上がりは少し不安定ですが、いつもしっかり試合を作れる。ストレートも投げようと思えば、もっと速いボールを投げられるはずです。体ができてくれば、楽に150キロ台のボールも投げられるようになると思います。(初戦で敗退したとはいえ)高い評価は、どの球団も変わらないでしょう」(セ・リーグ球団スカウト) 試合後、今朝丸は「立ち上がりが悪く、力んでしまい、思い通りの投球ができなかった」と反省したうえで、初回以降については、変化球を多投して、力みをとる工夫したと語っている。さらに試合中盤は真っすぐで三振が奪えたことで、自信になった部分もあったという。 そして、報道陣に今後の進路を聞かれると「高校野球は終わったので、次はプロで勝てる投手になりたい」とプロ志望を表明した。このまま順調にいけば、今秋のドラフト会議で上位指名は確実視されている。
毎年のように、スカウト陣が熱い視線を送る投手が
しかし、中学時代の今朝丸は、そこまで注目された投手ではなかった。筆者は、2020年12月に行われた中学硬式野球大会「タイガースカップ」で、当時、2年生だった今朝丸の投球を見ている。他の選手より身長が高く目立っていたもの、ストレートの最速は121キロ。中学硬式野球の有望投手と比べても、スピードがあるわけではなかった。 報徳学園で投手の指導を担当する磯野剛徳部長は、今朝丸の成長について、以下のように話す。 「入学してきた時はヒョロヒョロで、体も全然できていなかったです。将来性はあるかなとは思っていましたが、ここまでになるとは全く想像していませんでした。成長するきっかけになったのは、1年生の秋の近畿大会、智弁和歌山さんとの試合ですね。先発して(3回4失点で)ノックアウトされたんですけど、試合後に『どうやったら抑えられますか』と聞いてきた。その時の表情が本当に悔しそうでした。それまで、あまり感情を出すようなことがなかったので、すごく印象に残っています。それから(練習への)取り組みが変わりました。コツコツできる能力を持っている選手ですので、ここまで成長したのは、そのおかげだと思います」 近年の報徳学園は、プロ注目の好投手を多く輩出している。大社戦に2番手で登板した間木歩(3年)は140キロを超えるストレートと制球力の高さに定評がある。今年4月、今朝丸とともに「U18侍ジャパン」の選考合宿のメンバーに選出された。 大学に進学したOBをみても、今年のドラフト上位候補にあがる国学院大の右腕、坂口翔颯や、明治大の3年生左腕、久野悠斗は、いずれも最速150キロを超えている。毎年のように、スカウト陣が熱い視線を送る投手が出てくる高校は非常に珍しい。