こだわりの皮と餡、明治42年創業の鯛焼きの名店「浪花家総本店」
麻布十番商店街の一角に、いつも行列が絶えない店がある。鯛焼きの名店「浪花家総本店」である。開店と同時に次々と客が訪れ、その度に「いらっしゃい」という気持ちのいい声が響く。
「浪花家総本店」の鯛焼きの特徴は、皮と餡。厳選された材料を使って、1つずつ丁寧に焼き上げたこの店の鯛焼きのファンには、古くは詩人のサトウハチローや映画監督の山本嘉次郎、女優の新珠三千代など多くの著名人が名を連ねていたという。
「皮には砂糖を加えず、カリッと焼き上がるようにしています。餡は北海道産の小豆と砂糖、水それぞれ50キロずつを合わせて、1日に150キロを炊きあげています」。「浪花家総本店」店主の神戸将守(かんべまさもり)さんは言う。調味料もどこの家の台所にあるものしか使っていないから、年齢に関わらず、安心して口にできる。
この「浪花屋総本店」で焼く鯛焼きは1日2,000個。神戸さんを含めた5人の職人が3人ずつ交替で8時間焼いている。訪れる客は平均して4、500人。1個買う客もいれば、進物用に100個買う客もいる。最近は、週末の混んでいる時で2時間待ち程度だが、大江戸線開通当時はなんと5時間待ちの日もあったという。
「私が鯛焼きを焼き始めて30年になりますが、最初のうちは、思うように焼けませんでした。一人前になるまで3年かかりました」。今では創業明治42(1909)年の「浪花家総本店」の店主として、次の世代にその製法や味を繋ぐべく鯛焼きを焼き続ける神戸さんの言葉だ。
実は神戸さんのお父さんで先代の守一(もりかず)さんは、1975年に大ヒットした「泳げ!たいやきくん」のモデルになっている。残念ながら2010年に亡くなったが、コック帽に蝶ネクタイ姿で鯛焼きを焼く姿と明るい人柄を偲んで今でも「浪花家総本店」を訪れる常連客も多いという。 たかが鯛焼き、されど鯛焼き。行列しても食べたいというその旨さの秘密をぜひ確かめてほしい。
-------- 店舗情報 店名 浪花家総本店 所在地 東京都港区麻布十番1-8-14 電話 03-3583-4975 営業時間 10時~20時 定休日 毎週火曜日(第3火曜日・水曜日は連休) * 鯛焼きの他にもソース焼きそば、店で食べられる自家製黒蜜を使ったあんみつ、かき氷なども人気。