日本の「防衛最前線」では何が起こっているのか? 映画『戦雲』が映し出す南西諸島住民たちのリアル
しかし、交代を促されてもそこにとどまり、節子さんの訴えを正面から受け止めようとする彼らの目は、辺野古でごぼう抜きをする機動隊員や無表情の防衛局員のように、感情を殺しきった色をしてはいない。ここにあるのは、正義と悪とで二分される状況ではないのだ。 「映画を見て、まずはモヤモヤしてほしいと思っています。わかりやすい敵も、一気に解決できる策もない。だからこそモヤモヤしてほしいんです。その先にしか湧いてくる戦雲を食い止める道はありません。島民たちの明るさやたくましさに、雲を晴らすイメージを重ねてほしいと願っています」 ●ジャーナリスト、映画監督・三上智恵(みかみ・ちえ)毎日放送、琉球朝日放送でキャスターを務める傍らドキュメンタリーを制作。初監督映画『標的の村』(2013年)でキネマ旬報ベスト・テン文化映画部門1位ほか19の賞を受賞。フリーに転身後、映画『戦場ぬ止み(いくさばぬとぅどぅみ)』(15年)、『標的の島 風(かじ)かたか』(17年)を発表。続く映画『沖縄スパイ戦史』(大矢英代との共同監督作品、18年)は、文化庁映画賞ほか8つの賞を受賞。著書に『証言 沖縄スパイ戦史』(集英社新書、第7回城山三郎賞ほか3賞受賞)、『戦場ぬ止み 辺野古・高江からの祈り』『風かたか「標的の島」撮影記』(共に大月書店)などがある ■三上智恵監督『戦雲』ポレポレ東中野(東京)、シネマ・ジャック&ベティ(神奈川)、第七藝術劇場(大阪)ほかで上映中、3月23日(土)より桜坂劇場(沖縄)ほか全国順次公開 取材・文/柳瀬 徹 撮影/村上宗一郎(三上氏) ©2024『戦雲』製作委員会