カヌー世界王者「コーチなし、資金なし」22歳から競技にハマった40代女性の激流人生
■カヌーに一直線「友人とも遊ぶこともなくなって」 ── カヌーを始めてからは、どのような生活を送っていたのですか? 高久さん:週末はずっと川に行く生活でした。道具を一式持ち運ばないといけないので、車で移動する必要があります。そのころの私は車を持っていなかったため、知り合いにお願いして連れて行ってもらいました。休日はいつもカヌーに乗りたかったのですが、一緒に行く人の都合が悪いと川に行けなくて…。もちろん、それはしかたがないことですが、なんとかできないかと思っていると、年間130日ほど川に行く人を紹介してもらえたんです。その人に頼みこんで、道具を預かってもらいました。そこから休日はその人と一緒に、雨の日も雪の日も川に通う生活が始まります。
カヌーに出合ってから生活がガラリと変わりました。以前だったら平日は会社員、週末は友人と会って遊ぶ生活を送っていました。それが友人とも連絡を取らなくなり、親戚の集まりにも冠婚葬祭くらいしか行かなくなりました。私がカヌーにのめりこむ姿に、周囲はびっくりしていました。家族も「どうしちゃったの?」という感じだったかもしれません。でも、私がどっぷりハマっていて、誰も口出しできなかったと思います(笑)。
■川の上でサンドイッチを食べて練習を続ける幸せ ── フリースタイルカヤックを始めて7年後の2011年にワールドカップに出場、2012年、世界選手権で銀メダルを手にしています。 高久さん:会社員時代は、年100日以上のペースで日本全国の川をめぐっていました。競技に専念するため10年働いた会社を退職し、ますますカヌーにのめりこんでいったんです。だんだん日本より水深が深く、フリースタイルカヤックに適している欧米の川で競技してみたくなって。思いついたのが、世界大会の挑戦です。大会に出場したらモチベーションも上がるし、海外の川でカヌーに乗れます。勝つことより「もっと漕ぎたい」 というのが世界大会出場の動機ですね。