LCC「地方路線」は助成金依存から脱却できるか? 目指すべき「3つの成長戦略」を解説する
新規就航割引の航空戦略
地方空港ではないが、多くのLCCの拠点空港である成田空港は、羽田空港や仁川国際空港(韓国)などの海外空港に対抗するため、ネットワークの拡充に努めており、その結果、さまざまな割引制度が存在している。 具体的には、2015年に導入され、2019年に拡充された「新規就航割引」を指す。これは、航空会社が成田空港を出発する新規路線を開設する際、就航から3年間、着陸料の割引を受けられるというものだ。 具体的には、成田空港発の新規路線の場合、初年度は100%、2年目は70%、3年目は40%の着陸料が免除される。航空会社の新規就航路線は、初年度50%、2年目30%、3年目10%の着陸料が免除される。 このほか、午前中の着陸料が3年間無料になる、前年より増便・大型化した場合の着陸料が50%割引になる(新規路線を除く)などの割引がある。 新規就航割引の導入以降、成田空港発のLCCネットワークは、札幌、福岡、那覇などの主要都市だけでなく、地方都市にも拡大し、その効果が表れている。
LCC運休、地方空港の課題
しかし、手厚い助成金とは裏腹に、ここ数年、地方空港から成田や関西へのLCC便の運休や減便の動きが相次いでいる。 なかでもジェットスター・ジャパンの成田~庄内線は、山形県が空港カウンター設置などに7000万円を支援し、2019年に就航したが、コロナ禍の影響で就航から1年足らずで撤退。2020年以降、関空~福岡、熊本、高知、中部~新千歳、鹿児島などの路線を運休し、コロナウイルスの影響が少なくなった現在も運休したままだ。 また、ピーチの成田・関空~奄美線は2024年から夏を中心とした季節運航に縮小され、成田~女満別、成田~釧路、成田~宮崎などの路線も運休している。 JALの子会社となった春秋航空日本は、成田~新千歳、成田~広島線を除く全路線から撤退した。特に奄美路線は合併前からバニラエアが開設していた路線で、若者を中心に観光客を大幅に増やしてきた路線だけに、今回の結果を残念に思う人は多いだろう。 また、コロナ禍の影響や輸送人員の伸び悩みなど需要サイドの要因もあるが、パイロットをはじめとする人材不足や成田空港・関西国際空港の混雑の影響など、航空会社のリソース配分も大きく影響している。 実際、前述のピーチは、札幌や那覇などの主要路線を増便し、限られた機材や人員を有効活用している。助成金で手厚く保証され、人気路線になったにもかかわらず、路線網を維持できない日本のLCCは、特殊で厳しい状況にあるといえるだろう。