<高校野球>東邦・吉納、自信取り戻すひと振り 打順下げられ悔しさ
◇第91回選抜高校野球準決勝 ○東邦4-2明石商●(2日・甲子園) 一塁走者の東邦・河合が治療のためベンチに下がった。0―0の七回2死一、二塁、左打席にいた7番・吉納のカウントは1ボールだった。攻める側にも守る側にも「間」が生まれた。 【決勝3ランをたたき込んだ東邦・吉納の一打】 「力まずフルスイングしよう」。吉納はそう気持ちを整理した。2ボールからの3球目。明石商の右腕・中森に対して「カウントを取りに来るから次は真っすぐ」との読み通りにきた速球を捉えると、滞空時間の長い飛球は中堅左のスタンドへ飛び込んだ。 フルスイングは吉納の持ち味だ。パワーを買われ、1年生の春から控えチームでは4番を務めた。だが、難点は力んで強く振り過ぎること。強いスイングで球を捉える打者によくみられる手首の骨折も昨夏に経験した。今大会では当初5番を任され、広陵との2回戦で2安打3打点と活躍したが、筑陽学園との準々決勝では力みが出て5打数無安打3三振。前日の練習でも力みが取れていなかった。 前日のミーティングで打順を7番に下げられることを知ると、「まだ2年生。楽に打たせよう」という森田監督の温情を感じ取るより先に、悔しさを感じた。夜もバットを振り込んだ。「結果が出なければ明日はない」。覚悟のひと振りは、自信を取り戻すひと振りでもあった。【村田隆和】