白坂成功教授が語る「宇宙ビジネスのつくり方」とコラボレーションの重要性
多様性が求められるわけ
6月に行われたインターネットテクノロジーイベント「Interop Tokyo 2024」では、今年も宇宙とインターネットに特化した講演やパネルディスカッションを集めた特別企画「Internet × Space Summit」が開催された。そのなかの一つ、「これからの宇宙・空間産業について」と題した基調講演には、慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科の白坂 成功 教授、PwCコンサルティング合同会社(以下、PwCコンサルティング)宇宙・空間産業推進室の渡邊 敏康氏と南 政樹氏が登壇し、宇宙ビジネスを体系化して説明し、宇宙開発のこれからを語った。 基調講演の冒頭で白坂教授はまず5枚のCTスキャン画像を投影した。5枚のうち4枚にはがん細胞が、1枚にはゴリラのシルエットが写っている。これは海外の大学が実施した実験の一部である。24人の熟練の放射線技師に同じ画像を見せると、4枚の画像のがん細胞は簡単に見つけられたのにもかかわらず、83%の放射線技師はゴリラのシルエットを見過ごし「おかしいところはない」と答えたという。この実験結果は、人間はインプットする情報の全ては意識下で処理せずに、無意識のうちに処理する情報を選択していることを表している。素人でもわかるゴリラのシルエットに放射線技師が気付かなかったのは、脳が無意識のうちに必要のない情報だと判断していたからである。 人間は同じ認知の仕方を繰り返していると、思考が固定化される「専門家バイアス」がかかることがわかっている。放射線技師が毎日CTスキャン画像からがん細胞を見つける仕事をしていると、より早く、確実にがん細胞を見つけられるようになるが、がん細胞以外の情報には意識が及ばなくなってしまう。つまり、同じことを繰り返していると、ほかのことに目が行かなくなり、新しいことが始められなくなってしまう。 この専門家バイアスから抜け出すために多様性が求められ、世界中でオープンイノベーションが進められているわけだが、ただ異業種の人材を集めただけではイノベーションは起こらない。白坂教授が所属するシステムデザイン・マネジメント研究科は多様性を活かすメカニズムの研究や教育を行なっている。なかでも白坂教授は電機メーカーで人工衛星の開発を行っていた経験があり、宇宙を専門としている。
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